先日ご紹介した益川敏英氏による「科学者は戦争で何をしたか」、面白く、しかもとても分かりやすかったので、一気に読んでしまいました。
本書で折りにふれ登場する著者の恩師、坂田昌一氏の科学者としての姿勢には頭が下がりますが、その骨格を成す「科学者は科学者として学問を愛するより以前に、まず人間として人類を愛さなければならない」という言葉は、科学者ではない全ての人にも、まず一人の人間として恥ずかしくない行動をしなければならないという意味において、当てはまると思います。
経済最優先の風潮がはびこる世の中です。本書でも、短期集中ですぐ役立つ結果がでるものでなければ、研究費がおりない現実が指摘されています。市場原理の「選択と集中」が進めば、後にノーベル賞を取ったような研究でも、地味で手間のかかるものは真っ先に切り捨てられていたわけです。
こんな情けない状況であっても、益川氏は、二百年後には戦争はなくなっているのではないかと、かなり本気で信じていると書いています。それは200年前の世界を考えれば、人間はつまずきながらも、概ね正しい方向に歩いているのではないかという考えによるようですが、結局のところ、人間を信じているということなのだと思います。
前回のブログで、益川氏を「近所にいそう」と書きましたが、それはおそらく、氏が、研究室にこもり隔絶した世界にいる人という、一般に連想される科学者のイメージではないからでしょう。まずは市井に生きる一人の人間としての感覚を忘れない。科学者はもとより(私は特に政治家にそれを求めたいと思いますが)、全ての人がそのように生きることが、戦争のない世の中への一歩なのかもしれません。
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この本、私も少し前に読んでいました。少々辛めですが…
https://blog.goo.ne.jp/narkejp/e/4591ea4c1a5ef586b8601bb0b1c7e52c