なぜかクラシック音楽に関しては、不思議なくらい引きの強さがある私。クレーメル&マイスキー&アルゲリッチのトリオ公開リハ(演奏会形式)、メトロポリタンオペラの公開リハ、五嶋みどりの演奏会などなど、当たった公演は数知れず(というのはややオーバーですが。。。)。今回も雑誌の懸賞に当選して、多賀城市文化センターで開催されたイヴリー・ギトリスのヴァイオリンリサイタルに行って参りました。
今年で93歳になるギトリス氏。もはやヴァイオリン演奏で世界中を巡っているということ自体が奇跡、まさに生ける伝説と申せましょう。東日本大震災の際も、次々と演奏家が来日をキャンセルする中、「是非私に行かせてくれ」と、混乱おさまらぬ石巻に来て演奏したというのですから、本当に頭が下がります。
さて、噂には聞いていたギトリス氏の演奏、初めて生で聞かせて頂きました。曲はモーツァルトのヴァイオリンソナタホ短調(K.304)、ベートーヴェンのスプリングソナタ、クライスラーをはじめとした小曲です。
感想は一言でいうと、さすが真の音楽家、ということでしょうか。技術的には勿論、若かりし日のようにというわけにはいきませんが、演奏の端々にキラリと光る音を聞かせて下さいます。そして何と言っても、「音楽をしている」という姿勢、演奏家として一番大切なものが全身から溢れ出ている様は実に感動的です。音楽が生きている、というのはこういうことなんだと思います。
ギトリス氏はシェークスピアの言葉を引用し、雑誌のインタビューで、若い奏者には「Be true to yourself(自分自身に誠実であれ)」と伝えたいと語っています。そして「そこに込められた魂、フィーリングを表現することこそ、音楽にとって最も大切。正確さを目的にすることなんて、あり得ないのです」とも。音楽に、そして自分に誠実に向き合うギトリス氏は、その言葉を身をもって示されているように感じました。胸に刻んでおきたいと思います。