東の散歩道

B型ヴァイオリニストのマイペースライフ

perfect days

2024年02月18日 21時55分09秒 | 映画

 久々の映画です。ヴィム・ヴェンダース監督による「perfect days」、ようやく観に行って参りました。

 期待に違わず、素晴らしい映画でした。映像が美しく、役所広司の演技を演技と思わせない様は、至芸と言えるのではないでしょうか。映画の佇まいがそう思わせたのかもしれませんが、平山という人そのものになっている感じが、「東京物語」の笠智衆みたいだなと思ったら、ヴェンダース監督が小津映画を意識していたということを、映画を見た後に知りました。

 一瞬たりとも同じ表情をしていない「木漏れ日」が、映画の重要なモチーフになっています。同じような毎日でも、全てが違って、全てが愛おしい。実家と疎遠になっていることが平山の中の「陰」としてありますが、彼のように多くを望まず、過不足なく生きている様は、羨ましいほどになんとも清々しく、美しいと感じました。

 それにしても東京のトイレはアートですね!東京の公衆トイレを見てまわるツアーを企画してほしいくらい。建築好きにもオススメしたい映画です。

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見えるもの、見えないもの

2023年07月11日 22時40分58秒 | 映画

 ドキュメンタリー映画「目の見えない白鳥さん、アートを見にいく」を見て来ました。先日映画の上映に合わせ、山形にもご本人がいらして、子供達と美術館賞を楽しんだというニュースも新聞やテレビで報道されたので、ご存知の方も多いかと思います。

 「目が見えないのに、どうやって鑑賞するんだ?」と思われるでしょうが、一緒に見る方が、その人の感じた作品の内容を解説することで、白鳥さんがそれを想像するという、いわばコミュニケーションとしてのアート鑑賞です。

 この映画の冒頭は、インタビューに答える白鳥さんの映像で始まりますが、まず通常のインタビュー映像なら入らないはずの、「うん、うん」というインタビュアーの相槌がずっと入っているのが気になってしまい、なんで消さなかったのかな?と疑問に思ったのですが、ハタと思い当たりました。相槌は、無意味な音ではなく、「ちゃんと聞いてますよ、そうなんですね。わかる、わかる」という大切なコミュニケーションで、白鳥さんにとってはなくてはならないものなのです。すっかり自分の感覚だけで映画に入っていたことに最初に気付かされ、なんだか恥ずかしくなりました。

 以前、知人が「音楽は大好きだけど、例えば交響曲一曲聞くにも結構な時間がかかるのがネック。絵だったらパッと全体を把握して、一枚みるにもそんなに時間がかからないのに」と言っていたことを思い出しました。白鳥さんの鑑賞法は、もちろん「パッと全体が把握できる」ものではないので、かなりの時間を要します。一方で、白鳥さんはニュースをパソコンの音声から聞くのですが、それがもう何倍速化かわからないくらい早い。色々なシーンで、それぞれに流れている時間の速度というものについて考えさせられました。

 最後に「見えるか見えないかは、そんなに大した違いじゃないと思う」という白鳥さんのセリフがありました。「障がい者」という呼び方が全く似つかわしくない、誰よりも自由な白鳥さんのような精神が、ボーダーだらけの世の中を変えるヒントになるような気がします。

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ありし日々

2023年06月07日 21時42分50秒 | 映画

 先日、久しぶりに映画を見てまいりました。アニメです。多分私の友人でも、何を見たのか一発で当てられる人は少ないのではないかと思います。ズバリ、「スラムダンク」。現在も大ヒット上映中です。

 テレビのアニメ版は見たことがないのですが、雑誌連載時はまさに主人公達と同世代、私もコミック版をリアルタイムで読んでいました。スポーツはことごとく苦手ですが、見るのは結構好きなのです。そしてスポーツのルールはほとんど漫画に教わった気がします。そしてそれらは、ほぼ自分では買わずに人から借りてました(笑)。蛇足ですが、スラムダンクを貸してくれた友人は流川くんファンで、とにかく流川くんがかっこいいから是非読んでくれ、と勧められたのがきっかけです。

 お世辞抜きで面白かったです。宮崎アニメで日本のアニメーションのレベルの高さは重々承知しているつもりでしたが、今回の映画では、試合での臨場感に驚きました。まるで自分もコートの中にいるような気分になります。そして音がリアル。ボールがネットに入る音やドリブルの音。これを聴くためだけでも、映画館でみる価値がありますよ。

 しかし改めて思ったのですが、もしかして、今は友人と漫画やCDを貸し借りすることは減っているのでしょうか。CDはそもそも買われなくなっているし、漫画もスマホで見ている人って多いような。。。気軽に貸し借りしていた時代もなかなか良かったな、と、ありし日々に思いを馳せたことでした。

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イチケイのカラス

2023年03月02日 22時02分51秒 | 映画

 久々の映画です。ドラマでご存知の方も多いでしょう、「イチケイのカラス」。竹野内豊演じる入間みちお、黒木華演じる坂間千鶴が、相変わらず画面狭しと躍動しています。

 坂間みたいな人は実際いそう(ちょっと極端ではありますが)ですが、対する入間みちおは、、、いやいや、いないだろうこんな裁判官!というコメディタッチの中で、大事なところはブレずに描いているのは、この映画でも同じ。実際の法曹界でも、こんな信念の人が支えているのであれば日本は大丈夫、そう思えてしまいます。

 今回は他にも、月本弁護士(斎藤工)、鵜城防衛大臣(向井理)、小早川医師(吉田羊)といった魅力的な人物が登場しますが、それぞれもまた、自分の信念にしたがって行動していきます。その信念が、知ってか知らずか、ある時点から歪んでいったり迷ったりする中で、各々自分の心の内と向き合うことになるのです。この映画をみて、裁判は勝ち負けを争う(実際勝訴、敗訴と言いますし)ものではあるものの、勝者なき裁判というのも沢山あるんだろうな、と思った次第です。

 話は変わりますが、この映画はオープニングの映像がとても印象的です。始まった時点では、その映像にどんな意味があるのかわからないのですが、ラストで腑に落ち、そこにとても感動しました。良い映画はオープニングから面白いというのが私の持論ですが、これはここでも当てはまりました。自分を信じることの危うさと、それでもなお、それがとても大切であることに気付かされる映画です。

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アフター ヤン

2022年11月21日 22時33分26秒 | 映画

 「コロンバス」のコゴナダ監督の最新作、「アフターヤン」を見てきました。コロンバスのように、美しく静謐な世界。扱っているテーマがAIの記憶という近未来的なものでありながら、鑑賞後に心に残ったのは、積み重ねてきた時間、大切な人と過ごした記憶の温かさという普遍的なものでした。

 ヤンは「テクノ」と呼ばれる人型ロボット。と言っても、私たちがイメージするロボットとは違い、見た目は人間そのもので、飲食もできるようです(お茶を飲むシーンがあります)。お茶の販売をしているジェイク、カイラ夫妻の元にやってきて、まだ幼い養女ミカの兄として面倒をみていたヤンが、故障からか、突然動かなくなったところから物語が始まります。ヤンを購入した夫婦は、なんとか彼が元のように動けるようにと奔走する過程で、1日に数秒だけ残すことが出来ていた彼のメモリーを見、ヤンと過ごしてきた時間の尊さを再認識すると共に、彼のもう一つの過去も知ることになるのです。

 ヤンは極めて理知的で穏やか。そうプログラミングされているのでしょうが、ジェイク、カイラ、ミカと交わすそれぞれの対話を聞いていると、そんなことは忘れるくらい純粋な感情のやりとりがあり、泣きそうになります。「お茶はどんな味ですか」と興味深々に尋ねるヤンに、うまく言葉では表現出来ない、と正直に話すジェイク。ただ昔見た映画を引き合いに、そのイメージを伝え、今度一緒にその映画を見ようと約束します。カイラとは、死について語り合います。終わりは何かの始まりだと思うか、と問うカイラへのヤンの答えが秀逸です。また、学校で友人に、今の両親は本当の親じゃないだろう、という意地悪を言われて傷つくミカへの励ましも、彼女の出自に対する敬意と愛情に溢れています。是非映画館でご確認頂けたらと思います。

 ヤンの残したメモリーには、しばしば木漏れ日のような、光と影の揺らぎが映し出されています。相反する要素が作り出す世界がこんなにも美しいことに、素直に感動します。使われているテーマ音楽は坂本龍一氏。シンプルながら奥深い味わいは、お茶の世界にも通ずるものがあるように感じました。多くの人に見てほしい映画です。

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ヒューマン・ボイス

2022年11月05日 23時11分01秒 | 映画

 先日見た映画「ヒューマン・ボイス」。ペドロ・アルモドバル監督による、30分程度の短編です。実は最初は見る気がなかったのですが、たまたま上映時間前に映画館の近くにいたものですから、短編の気易さからフラッと寄ってみたのでした。

 なぜ見る気になったかというと、私が山響に入団した年に、定期で取り上げた作品が、プーランクのモノオペラ「人間の声」だったのです。映画と同じくコクトーの原作なので、大筋はオペラと同じです。しかし、、、印象がだいぶ違ってびっくりしました。

 一言で言えば、時代が変わるとこうなるのか、というところでしょうか。終わり方が違うのが決定的ですが、現代の女性はかくも強く(?)なったか、と。電話がスマートフォンで、ワイヤレスイヤホンを使っていたのも印象に残ります。コクトーが見たら、怒るか苦笑するか。いや、面白がってニヤリと笑うかもしれませんね。人間ドラマというよりは、アート作品を見たような気持ちになります。美術館に行くつもりでご覧になってみてはいかがでしょうか。

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はい、泳げません

2022年07月03日 23時20分22秒 | 映画

長い文化庁公演を無事に終え、久々に映画を見て参りました。「はい、泳げません」。長谷川博己と綾瀬はるかいう、二大スター俳優(しかも実力も折り紙つき)が主演だったので選んだものです。
コメディ調の感動作ということで、わりとコミカルなのかなと思っていたのですが、思いがけず深いシーンが多くて、良いものを見た!という満足感がありました。

一言で言ってしまえば、ある事故で深く傷ついた主人公(長谷川)が再生する物語。その傷を乗り越えるために必要だったのが水泳で、コーチ(綾瀬)や周囲の助けで克服していきます。

面白かったシーンは沢山ありますが、理詰めで、ともすれば頭でっかちになりがちな主人公に対する実戦的なコーチの教えが、主人公の成長に伴って、言うことも変化していくのはなるほどなぁと唸ってしまいました。前言っていたことと違う、という主人公に対し、今は以前と違うのだというコーチ。成長に合わせて意識が変わり、教え方も変わるのは理にかなっていますよね。

もう一つ印象的だったのは、リハビリの語源が「再び人間らしく生きる」というもの。この布石になっているのが、主人公と同じ大学の先生(小林薫)が、「小鳥遊(たかなし。主人公の名字)先生が一番小鳥遊先生らしく生きられる」という内容のセリフです。短いシーンなのですが、この映画を象徴しているとも言える名シーンだと思います。

見ると元気になれる映画です。泳げる人も泳げない人も是非!

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高津川

2022年05月10日 22時28分13秒 | 映画

 先日「高津川」という、シンプルな固有名詞一本のタイトルの映画を見て参りました。ありそうでなかなか無いですよね。

 そのタイトル通り、内容もいたってシンプルです。若者が都会に離れ、少子高齢化の過疎地で生きる人々の悩み、押し寄せる開発の波。そんな中でも確かにある、大切なものを受け継いでいく喜び、それを見守るように包み込む大自然。。。。描かれているものは、そう言った中で育まれる、かけがえの無い日常です。

 中でも、物語の鍵になる伝統の神楽、これに関わる人々の姿の美しいこと。俳優陣も、「この人巧いな!」という感じではなく、まさにそこで生きる人々そのものという自然さでいらっしゃる。日常の中のドラマに泣かされました。

 底まで透き通った高津川の水のように、静かに染み込んでいく感動があります。一服の清涼剤のような映画です。

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対立はいつの世も

2022年04月01日 22時55分08秒 | 映画

 久々に映画の話を。「ウエストサイド・ストーリー」です。満を持してスピルバーグ監督がメガホンを取ったということで、駆け込みで行って参りました。オリジナルの方は、高校の音楽の授業、映画館でのリバイバル上映、そして家のテレビで何度かといった感じで、それなりの回数を見ていますが、初めて見た時の衝撃は今でも鮮明に覚えています。それだけに、今回の新作にはがっかりさせられたら嫌だなと、やや恐る恐るといった感じで見に行ったのですが、杞憂に終わりました。おそらく、今回初めてウエストサイドを見るという人も、私が初めてウエストサイドを見た時と勝るとも劣らない感動を覚えるのではないでしょうか。スピルバーグ監督の「ウエストサイド」への深い敬意が感じられる傑作となっています。

 ウエストサイドといえば、オリジナルは、冒頭から俯瞰したN.Y.が、華やかな摩天楼から徐々に移民の住む下町の方にカメラの焦点が移っていくシーンでぐっと引き込まれた記憶がありますが、今回は、現在のリンカーンセンター周辺の再開発前である工事現場、すなわち瓦礫の場面から始まります。私はこの光景、今連日ニュースで流れる、ウクライナの戦禍の街を連想してしまい、何とも言えない気持ちになってしまいました。しかしこのシーンのお陰で、シャークス、ジェッツのグループ対立という基軸だけでなく、二つの移民グループは、そもそも社会から疎外された集団であり、富裕な社会と居場所を追われる移民という対立構造があぶり出されていて、なるほどと思いました。

 圧巻の音楽とダンスに加え、今回はやや会話部分が増えている気がします。例えばトニーが働く雑貨店でのトニーとリフの会話、トニーと店主バレンティーナの会話、地下鉄の中でのトニーとマリアの会話など。どれも長くはありませんが、ドラマの陰影を深くするシーンになっています。

 最後のクレジットでオリジナルのアニータ、「リタ・モレノ」の名を見つけ、あれは彼女だったのか!と、嬉しいサプライズもありました。深刻な対立が止まない現代、改めて多くの人に見て頂きたい映画です。

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往年の

2021年10月02日 22時27分06秒 | 映画

 明日は川西町でコンサート。ありがたいことに、チケットの売れ行きは好調のようです。

 今回のプログラムの中に、ラフマニノフの名作、「ピアノコンチェルト第3番」があります。実は私は、今回が初めての演奏になるのですが、山響でもそういう方が結構いて、なかなか演奏の機会がなかったようです。

 ラフマニノフの3番と聞いて真っ先に思い出すのが、映画「シャイン」。実在のピアニスト、デイヴィッド・ヘルフゴッドの伝記的映画で、この曲が重要なモチーフになっています。この映画を見てから、しばらくラフマニノフばかり聞いていました。

 今日のリハーサルで、休憩中に楽団の事務局若手スタッフと「この曲をモチーフにした有名な映画があるんだよー」という話をしていて、どうやら知らない様子の彼を見て、ハタと気づきました。あれ、そもそもこの映画、いつ公開されたんだっけ。。。?

 調べてみたら、なんと1997年。そりゃ知らない訳だ。。。。私も千葉で、大学生活を満喫していた時代です。その後、映画で主人公が留学した学校に、私も行くことになるのですが、当時はそんなこととはつゆ知らず。これはもう、往年の名画、みたいな範疇なんでしょうか。過ぎ去りし年月に、思わず遠い目になってしまいました。

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ドライブ・マイ・カー

2021年09月18日 14時02分36秒 | 映画

 カンヌ映画祭で脚本賞をはじめとした4冠受賞と話題になっている映画、「ドライブ・マイ・カー」を見てきました。村上春樹の原作は読んでいないのですが、短編集の中の一つという知識だけで上映スケジュールを検索すると、、、なんと上映時間が約三時間!あれ、、、短編だよね?相当内容足してる??まあ脚本賞を取っているくらいだから、妙な足し方はしていないでしょうが、生の舞台じゃない三時間はなかなかですよね(まあ生でもつまらなければやっぱり退屈しますが)。降って湧いた休暇中じゃなかったら行かなかったかも。。。

 結果。退屈は全くしませんでした。脚本賞も頷けます。物語全体に、うまく起伏が作られていて、あちこち見所が散りばめられています。私自身が建築好きなこともあり、原爆ドームから海につながるルート上のゴミ処理場を入れたことは凄いなと思いました。映像的に美しい上、生と死、再生のメタファーであり、しかもドライバーのみさきの元職場ということで設定にも無理がありません。これも原作にあるのかどうかはわかりませんが、オススメしたい場面の一つです。ただ、もし原作にこのシーンがあるとしたら、こんなにキラキラした場所ではなく、もう少し寂寥感のある描写なのではないかと想像しますが。

 俳優陣は皆素晴らしく、ドライバーの女性役、三浦透子は出色でした。重い過去を背負っている故、ほぼ無表情で、(劇中劇の本読み同様)感情の込めないセリフながら、ちょっとした動作とか、クライマックスに向けての微妙な変化とかは、魅力が滲み出る熟練の俳優さんのようでした。しかし、私がもし、この映画のベスト俳優賞を一人につけるとしたら、手話を使う韓国の女優、パク・ユリムです。優しくて、意思が強い役のキャラクターが、表情や流れるように美しく雄弁な手話から手に取るようにわかり、見惚れてしまいました。クライマックスの劇中劇、チェーホフの「ワーニャ伯父さん」のシーンは圧巻です。原作同様、こちらもまだ読んだことがないのですが、是非読んでみたいと思います。

 

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涼を求めて その2

2021年07月22日 22時28分35秒 | 映画

 私流避暑法その2、それは映画館に行くこと!ちょうど山響はちょっとした連休期間でしたので、見たい映画が昼下がりの一番暑い時間帯に上映されると知り、先日いそいそと映画館に出かけたのでした。

 ところが!着いてみると、なんとその映画の上映時間が、私の思っていた時間と全く違っているではないですか。どうやら私の見ていたスケジュール表は、翌日からのものだったようで。。。がっくり。

 しかし外は炎天下。映画館の会員になっているので懐が痛まないということもあり、せっかくだから、ちょうどこれから上映される映画でも見て帰ろうではないかと思い立ち、スケジュール表をチェック。するとタイミング的に丁度良いのは、「ブラック・ウィドウ」という、全く知らないシリーズものの最新作のみ。ディズニーの映画で、どうも戦闘もののようです。実は私は、戦闘ものはホラーと同じくらい関心のない分野。しかもシリーズものとあっては、楽しめるのかどうかすら甚だ疑問です。

 しかし外は炎天下。しかし映画は多分興味を持てない。しかし炎天下。。。。1分くらい逡巡した後、英語の勉強になるかもしれないと思い、見ることにしたのでした。

 結果。色々な意味で興味深く、最後まで退屈することなく見ることができました。因みにこの映画は、アべンジャーズという、地球壊滅を目論む悪と戦うヒーロー軍団の活躍を描くシリーズのようですが、私が見たのはそのメンバーの一人、ブラック・ウィドウを主人公にしたスピンオフのようなものでした。おかげでシリーズを知らなくても問題なし。物語はその女性暗殺者がいかに誕生したか、幼少期までさかのぼって描かれています。

 驚いたのは、彼女がKGBの元で幼い頃から訓練された、いわば選ばれし秘密兵器であること。物語序盤から、家族(ミッションのための疑似家族で、血のつながりはない)がキューバに亡命する(アメリカの追っ手を振り切り、隠し持っていた小型飛行機でキューバに逃げた)というシーンがあり、度肝を抜かれました。しかし、いくらフィクションとはいえ、こんな風にロシアを描いて問題ないんですかね。。。。設定では1980年代だったかと思いますが。身体能力に優れた幼い少女たちを訓練し、科学的処置を施した上で洗脳し、兵として戦わせるという設定は、少年少女を兵士に仕立て上げる現実が世界には沢山あるだけに、フィクションですから、とは片付けられないものを感じます。最近瀬谷ルミ子氏の『職業は武装解除』という本を読んだ後だっただけに、なおさら恐ろしく思いました。話としては、友情や家族愛がテーマにはなっていましたが、子供も沢山見るものだけに、色々と考えてしまいました。

 ところで、「avengers」の元となるavenge、もはや日本語化している「リベンジ (revenge) 」とどう違うのか?検索してみると、revengeは個人的な復讐、avengeは不正や悪事に対する、正義感からくる復讐で、制裁のような意味合いがあるようです。なんだかモヤモヤが深まった英語学習になってしまいました。

 

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いとみち

2021年06月30日 22時53分48秒 | 映画

 人生で初めての経験をしました。映画館で、観客が私ともう一人という、大画面二人占め。割とマイナー系の映画が好きなため、空席が目立つ映画鑑賞はよくあるのですが、それにしても二人は初めてでした。。。。

 もしや小難しそうなドキュメンタリー?と思われたかもしれませんが、さにあらず。舞台が青森というのが珍しく、この映画の肝でもあるのですが、内容は正統派青春ムービーです。

 この作品の最大の魅力は、これでもかというくらいに押し寄せてくる津軽弁。そして主人公「いと」と、その祖母の津軽三味線です。

 白状します、ストーリーが追える程度にはわかるものの、想像以上にわからない津軽弁がありました(主に主人公のセリフ)。。。字幕があればという考えが、一瞬よぎったほどです。しかし、字幕がないからこそ一生懸命聞き取ろうとしますし、その音を存分に楽しめます。あ、でも「ままけ(ご飯食べなさい)」はわかりましたよ、山形も同じですから。

 主人公がコテコテの津軽弁で、全く標準語が話せないのが、同居家族の1/2が標準語ネイティブ(父が東京出身の大学教授。ちなみに母は若くして亡くなっている)であることを考えると不思議な気もしますが、細かいことを言わず、存分に青森の魅力を楽しみたい映画です。

 冒頭に、主人公が歴史の教科書を音読すると、先生が「まるでクラシック音楽だな」と言い、生徒がどっと笑うシーンがありました。「。。。。要するに理解が難しいと言いたいんだよね。。?」と不意打ちを食らった気がしましたが、映画を観終わって「模倣ではない本物だ」と解釈もできるかなと(先生がその意味で言ったとは思いませんが)。本物の青森、ぜひ多くの人に堪能して頂きたいと思います。

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時は流れる

2021年05月20日 22時40分24秒 | 映画

 先日、テレビで映画「タイタニック」が放映されましたね。公開当時はまさに一世を風靡した作品ですが、実は私、この映画は見なかったのです。なんとなく、大体ストーリーに検討がつくから別に今はいいかなーと思っていたら終わっていたという感じです。

 しかし山響でも度々音楽を演奏していますし、私の周囲で見た人の評判は概ね良かったので、今回の機会に初めて見ました。最初に思ったのが、ディカプリオが若い!!!という驚愕。いや、考えてみれば全然驚くようなことではないのですが。山響の若手は知らない映画だったりする訳で、もはや「クラシック」の領域と言っても良いのかもしれません。

 映画はとても面白かったです。事故後のシーンは、よくこんな撮影が出来たものだと思いますし、主人公の二人に加え、それ以外のドラマ(私は最後まで演奏を続けた音楽家たちの姿に泣けました。これも史実と知り更に涙。。)も良かった。

 しかしもしかしたら、一番のインパクトは、若かりしローズと現在のローズの間に流れた時間の重さかもしれません。実は今月誕生日を迎えましたが、今更めでたくもなんともない。。。。という感想しか持てず。それでも家族や友人たちからおめでとう!というメッセージを頂き、それこそタイタニックが公開される前からの友人と交流を続けてこれているのは幸せなことだとも実感しています。あっという間にこぼれ落ちる時間だからこそ、一瞬一瞬大切にしていきたいものだと思った誕生日でした。

 

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ブータン 山の教室

2021年05月10日 22時41分29秒 | 映画

 鬱々とした雰囲気を吹き飛ばす、気持ちの洗われるような映画を見てきました。「ブータン 山の教室」です。

 国民の幸福度が高いということで有名なブータンですが、実際のところどのような国なのか。映画を見て、やはり幸福な国というのは本当かもしれないと思いました。

 映画のストーリーは、特別目新しいところはありません。新人ながら、早くも教師という仕事に自分は向かないと見切りをつけ、オーストラリア移住を夢見ている若者、ウゲンが主人公。彼が山奥のルナナ村に赴任することになり、そこでの村人との交流を通し、成長していく様子を描いています。

 なんといっても見所は、ルナナ村、そしてそこで暮らす人々の様子です。中でも教師を期待に満ちた目で待っている村の子ども達の表情が素晴らしい。クラス委員のペム・ザムは、父親は酒に溺れて働かず、母親とは別居、家の仕事を手伝いながら祖母に育てられている女の子なのですが、ウゲンを見つめるその顔は無垢で真っ直ぐで、新しいことが学べる希望でキラキラ輝いています。実は子ども達は役名が実名で、ペム・ザムの大変な境遇も現実のものだということを、後で覗いた映画のHPで知りました。ペム・ザムだけではありません、皆、学びたくて仕方がないのです。最初の自己紹介で、子供たちは名前と将来の夢を言うのですが、「特にない」とか「どうせ決まっている」みたいなことは言わずに、嬉しそうに夢を語るのです。中でも「教師」といった子が「どうして?」と問われると「先生は未来に触れることができるから」と答えたのには驚きました。どうやら村長がいつもそう言っているらしいということが後で分かるのですが、そうか、学問は未来なのか。。。。と考えさせられました。でも忘れがちですが、全くその通りです。だからでしょう、子ども達だけでなく、大人も皆、ぜひ子らを学ばせたいと思い、先生の着任を心待ちにしていたのでした。

 ところで秘境・ルナナ村ですが、子供達が英語も話し(挨拶程度しか出てきませんが)、リスニングもできているらしいのには驚きました。授業で単語を教えていたので、読み書きは学ぶ必要があるようですが。ネット情報によると、ブータンは英語が普及していて、旅行してもあまり困らないようなのです。知らなかった。。。。

 映画を見終えて、「未来に触れる」の「未来」は、学問と同時に、子どもたちのことでもあるのだとひしひしと感じました。大事なものが詰まった映画です。ぜひ一人でも多くの方に見ていただきたいと思います。

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