官邸に不都合な質問を果敢に発し、政権、ひいては国民に疑問を投げ掛ける東京新聞の記者、望月衣塑子さんの姿に着想を得て作られたという本作。ようやく見にいくことが出来ました。現実を顧みて、背筋が凍る気がしました。並みのホラーよりも納涼効果があること請け合いです。
何といっても恐ろしいのは、「何だかんだ言ってもこれはフィクション」と言い切れない、世の中の現実です。大国のトップがフェイクニュースをながし続ける今、我々も何が正しいのかわからなくなりつつあるのですから。それを思ってこの映画に向き合うと、主人公の新聞記者が信条としている「自分を信じ、疑う」ことの重さを感じます。
新聞記者役のシム・ウンギョン、そしてもう一人の主人公、内閣府に出向してきた元外務省職員役の松坂桃李の演技が実に素晴らしい。二人とも難しい役なのですが、目の表情がとても雄弁で、それだけでもみる価値があります。これまでシム・ウンギョンという役者さんのことを知らなかったのですが、その凄みさえ感じる演技には圧倒されました。
先の参議院選挙の投票率は50%を割り、過去最低に次ぐ低水準だったとか。難しい時代ではありますが、個々が未来のために大切なことを見据えて政治に向き合う以外、解決策はないような気がします。じっくりと見て、考えて頂きたい一作です。