鬼灯(ほおずき)
木枯らしが吹き、木々の葉が落ちて、寒々と見通しが良くなった山の斜面に日が暮れると狐火が走った。
新しい墓を暴いた狐が人骨を口にくわえて走るのだと云う。
大きな火の玉のように見えることも、蛍火のように弱弱しく点滅する事もあった。
人骨に含まれる燐が燃えるのだという説明に、なにも判らずに納得し安心したものだ。
日が落ちて漆黒の闇に包まれると、魑魅魍魎の存在がにわかに現実味を帯びて不気味である。
大人でも夜の外出を嫌った。
しかし 急用というものは得てして夜に多いものだ。
そんな時、提灯は必需品であった。提灯で遠くを照らすことはできない、視界のおよぶは範囲は一寸である。