或る「享楽的日記」伝

ごく普通の中年サラリーマンが、起業に向けた資格受験や、音楽、絵画などの趣味の日々を淡々と綴ります。

ギュスターブ・モロー美術館

2009-09-03 06:21:07 | 830 パリ紀行
パリの美術館紹介シリーズの第4弾は、9区にあるギュスターブ・モロー美術館。ごくフツーの住宅街の中にあって、取り立てて大きな看板もなく、注意していないとつい通り過ごしそうになる。それとここは開館日と開館時間がややこしいので、出かける前によく確認しておく必要あり。

「ここでいいんだよな」と半信半疑で建物の中へ入ると、受付には若い女性が一人ポツリと。美術館というより、邸宅の中へ足を踏み入れた感じ。というのもここはモローが長年住んだアパルトマンを改造したもの。1階(日本式2階)は居住スペースで寝室や居間があった。当時からかどうかは分からないけど、とにかくやたら展示品が多い。雑然としすぎと思ったけど。しかしそれを差し引いても、床、壁、調度品等の全てがモローワールド。このレトロな雰囲気はファンにはたまらないだろうなあ。

特徴のある丸い螺旋階段を上がった2階と3階がアトリエスペース。天井がすごく高いので空間そのものに迫力がある。展示されている作品は、聖書やギリシャ神話が題材となった、いわゆるモローもの。当時そのままの内装と神秘的で幻想的な彼の絵画があいまって独自の雰囲気を醸し出していた。まさに自分の作品はここで観るべきとモローが勧めているような。

展示されていた作品で最も気に入ったのが上の写真の代表作「一角獣(Les Licornes)」(1885年)。いわゆるユニコーンと呼ばれている架空の動物。この絵から放たれるオーラはどうだ。間近に絵肌を眺めると、信じられないくらいの細かな描き込みが。透かしにも見える細く黒い線と、眩いばかりの赤や緑、青といった精緻な装飾。耽美的とか官能的とか、そんなありきたりの表現を超越している。人間の内面や夢、神秘性を表現しようとする象徴主義の極みを垣間みたような気がしたなあ。

やや辺鄙な場所といい、なんかGACKTか美輪明宏が派手な衣装をまとって出てきそうな妖しい雰囲気といい、こじんまりとしたこの空間は、まさに”隠れ家”的。お忍びでの逢引きなんかにピッタリだよなと思っていると、なんと実際にそういう目的で使われているとか。国は違えど男が考えることは一緒かよ。それにしても媚薬効果は満点で、その後がかなり期待できそう。


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