或る「享楽的日記」伝

ごく普通の中年サラリーマンが、起業に向けた資格受験や、音楽、絵画などの趣味の日々を淡々と綴ります。

Phillips Collection

2012-01-09 07:30:55 | 870 米国紀行
昨年から続けている米国旅行の話の続き。現地3日目、最初に訪問したのがフィリップス・コレクション(Phillips Collection)。場所はワシントンDCのグリーンベルトの中央にあるホワイトハウスの北に位置し、デュポンサークルの近く。ホテルから少し距離があったのでタクシーで付近まで行って、そこから歩いてみた。辺りは明るく雰囲気の良い閑静な中流住宅街だった。

ここは米国の裕福な実業家の家庭に生まれたダンカン・フィリップスのコレクションを基に1921年に創設されたもの。世界有数の名画を集めた米国初のプライベート美術館としてつとに有名。所蔵作品が2000点以上もあるにもかかわらず、美術館としてはこじんまりしていて、しかも余裕を持った展示になっている。だからお目当ての作品に当日で会えるかどうかは難しい。

とりあえず印象派の作品が置いてあるフロアへ。いきなりルノアールの「舟遊びの昼食」(1881年)が目の前に現れてビックリ。この美術館の目玉ともいえる作品で、左下に描かれた子犬を抱いた女性が、その後ルノアールの妻となるアリーヌ・シャリゴ。彼女が被写体になった作品は他にも数点あるけど、最も有名なのがこの作品。とにかく色彩が明るく鮮やかだったなあ。

自分的に嬉しかったのは、ボナールの作品が多数展示されていたこと。その中でも「開いた窓(The open window)」(1921年)は素晴らしかった。もっと言えば懐かしかった。というのもこの作品はヴェルノネにある彼の別荘を描いたもの。3年前のパリ旅行のついでにこの別荘を訪れた時の思い出が脳裏をかすめて。窓から見えるのは別荘の前を流れるセーヌ川沿いの木立。つかの間のタイムスリップ。自分が眺めた風景が、絵の中の窓から見えるという不思議な感覚。たまらない快感に包まれたような。

そんなフロアを後にして館内を散策していると、黒塗りのグランドピアノが置かれていて。他のフロアとは全く異なる趣味と雰囲気。後で調べるとここは音楽室で、毎週日曜日にクラシックのコンサートが開催されているのだとか。周囲に客がひとりもいなかったので、ちょっと弾いてみようかとも思ったけど、そこをぐっと我慢したかな。それにしても素敵な美術館だったなあ。