或る「享楽的日記」伝

ごく普通の中年サラリーマンが、起業に向けた資格受験や、音楽、絵画などの趣味の日々を淡々と綴ります。

ガシェの家

2009-06-19 06:40:09 | 830 パリ紀行
オーヴェールと言えば、なんと言っても有名なのがゴッホ。代表的な足跡は前に記事で紹介したけど、今回はガシェ医師とのつながりに焦点を当ててみた。ピサロの紹介により精神科医で絵に理解のあるガシェを頼ってオーヴェールに来たのが1890年の5月。南仏のサン・レミにある精神病院を出たばかりの彼にとって、のどかでのんびりして暮らし易い場所だったらしい。

そのガシェの家は町のはずれに位置していて、駅から歩くと30分近くはかかる。この家は、コンクリートのようにつるりとした無機的な感じの石積みで、現代的なその外観は明らかに他の家とは異なり目立っていた。受付で入場料を支払おうとすると、なんとその日は無料。それなのにボランティアのおばさんが各部屋で丁寧に英語で説明してくれたのが嬉しかった。

印象的だったのは庭。高台にあるこの家の表庭からはオーヴェールの街並みがよく見えた。この後にオルセー美術館で観た下の写真の「庭のガシェ嬢(Mademoiselle Gachet au jardin)」には、ゴッホの性格の一面である優しさが良く出ていて。特に絵の中に小さく描かれている清楚な雰囲気の女性が印象的だった。彼女はガシェ医師の娘のマルグリットで当時21歳。

ゴッホは彼女に恋心を持っていたようだけど、妻を無くして娘と息子の3人で暮らしていたガシェはそのことに気づき、あまり心良くは思っていなかったらしい。だけどマルグリットはこの地に一生住み、しかも独身で通し、ゴッホの墓に花を絶やすことがなかったとか。2人の関係は今となっては藪の中だけど、悲しい出来事ばかりのゴッホにとってこの話には心が暖まるなあ。

この絵を眺めていて気づいたのが、ひろしま美術館にある「ドービニーの庭」と明るい色使いがよく似ていること。これについては別の記事で紹介するつもり。



庭のガシェ嬢 1890