或る「享楽的日記」伝

ごく普通の中年サラリーマンが、起業に向けた資格受験や、音楽、絵画などの趣味の日々を淡々と綴ります。

Ma Roulotte <sequel>

2009-06-05 06:16:39 | 830 パリ紀行
ジヴェルニーにあるモネの庭園に、最初はバスツアーを利用して行こうかと考えていた。ところがボナールの別荘はセーヌ川沿いの逆方向。ヴェルノン駅から歩くには遠すぎるし。地図を見ながら悩んでいた時に眼に入ったのが駅前のカフェで営業しているレンタバイク(レンタル自転車)。もともとジヴェルニーへの交通手段として用意しているのだけど、これを使ってボナールの別荘にも行ってやろうと。これなら時間も自由に使えるし料金も安い。なんか徐々に期待で胸が熱くなっていたような。

サン・ラザール駅から列車(SNCF)に乗ってヴェルノン駅に着いたのが朝8時過ぎ。目的のカフェは駅のすぐ前。しかしそこからが苦難の連続だった。カフェの店員の若いお兄ちゃんに全く英語が通じない。アンチョコを見ながらようやく自転車を借りたいことを説明して。ところがすんなりとは行かず、何か要求している雰囲気。担保にライセンスを預かることがようやく分かって。

しかし運転免許証を持っていない。やむなくパスポートを預けることに。しぶしぶ渡すと彼は近くのカウンターにあったコップの中へポイっと。「おいおい、客に丸見えじゃん、盗まれたらどうすんだよ」と思ってもフランス語を喋れない。後ろ髪をひかれる思いで慣れないマウンテンバイクにまたがり、いざ出陣。ところが前日が暑かったので薄着をしたのが大間違い。寒かった。

地図とだいぶ違う地形に戸惑ったのはセーヌ川を渡ってから。あちこち試行錯誤しながら進んでいくと、ついに近いかなという雰囲気を感じて。眼に飛び込んできたのが前回の記事の中の絵で見覚えのあるテラスのデザイン。体が熱くなっている。ついに見つけたぞと。寒さと疲れでヘトヘトだったけど、急に元気が湧いてきて。それからはもうボナールの世界に浸りっきり。

別荘の住人の迷惑にならないように気遣いながらしばし散策。静かに流れるセーヌ川に柔らな朝日が差し込み、木漏れ日と水面が繰りなす光と影。素朴で地味だけど、なんて素敵なんだろう。時空を超えてボナールと同じ景色を眺めている自分がいる。かけがえのない至福の時間。さすがに100年前とは眺めがだいぶ変わってはいるけど。確信しました、ここなんだなと。