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■本城義雄油絵展(2014年10月13日~18日、札幌)

2014年10月18日 10時21分09秒 | 展覧会の紹介-絵画、版画、イラスト
 
 全国一のミニ市として知られる歌志内市に住む本城義雄さんの個展。
 骨董や静物を写実的に、静的に描くベテラン画家として知られる本城さんが、画面に裸婦を入れるなど、画風をかなり変えたのは、ほんの3、4年前。
 70歳台になってからのチャレンジに、筆者も感服したのを、今もおぼえています。

 今回の個展は、時計台ギャラリーのA、B両室を使い、全道展や国画会に出品した近年の大作はもちろん、小品の油彩、さらにデッサンや、モティーフにするために蒐集している多くの骨董などを並べた、バラエティーに富んだ内容になっています。

 その、人物を導入した絵が、これ。


 「退化の海「アンモンナイト」」

 これまでも描いてきた静物に加え、横たわる裸婦や、さらに風景も描き、シュルレアリスティックな光景を重層的に表現しています。
 本城さんの画業の中でも、ターニングポイント的な作品になったと言えるのではないでしょうか。

 おもちゃのような飛行機。輪投げ。滑走路。置物のように見える鳥。老夫婦?の後ろ姿。
 何でもない物の組み合わせが、現実を超えた不可思議な場面を作り出しています。

 本城さんによると
「人物は、ずっと描きたかったんだよ」
とのこと。
 しかし、自信がなかったので(謙遜かと思いますが)、近隣の滝川市の自然美術史館で年何度か開かれているデッサン会に参加して練習したといいます。
 そこでのデッサンも今回は展示されています。

 これは「裸婦の態「No.5 CHANEL」」。

 シャネルの5番といえば、マリリン・モンローが来日記者会見で語ったせりふが有名ですね。

 この絵では、鏡のなかの映像も不思議な感じがしますし、洗面台にかみそりやピンセットが落下している最中(あるいは、空中で停止?)であることも、奇妙な感覚を増しています。
 手前の白い容器も、傾いています。
 同じポーズをとって四つの姿態が同時に描かれている裸婦や、洗面所には不似合いな電灯など、見れば見るほど不思議さが伝わってきます。

 以前と同様の、骨董や古い物を正面から静かに描いた絵もあります。

 次の作品は「正二十面体「積み本」」。

 ヤマハの足踏みオルガンと、積み上げられた「改定 真書太閤記」や英和辞典などの古書が、主な題材です。
 オルガンの背後には、むかし小学校の教室にあったような、壁掛け地図が置いてあります。

(筆者の子ども時代には、たいていの教室に足踏みオルガンがありましたが、いまはどうなんでしょう。そもそも製造されているのでしょうか)

 ほかに、懐中時計やマッチ、卵が入ったガラス容器なども、絵の中に見えます。

 しかし、この絵も、本の右手に載った小さな丸いレンズ状の中に、裸婦がうつっているなど、不思議さを感じさせるところがあります。

 筆者がいちばん「あれっ」と思ったのは、メトロノームがのった鍵盤は重みで引っ込んではいないのに、その1オクターブ半ほど高音側で「ミ」の鍵盤だけが下がっている(北海道弁でいうと「押ささっている」)ところです。

 ほかにも、「蔵にて「紙の時計 開かない箱」」では、画面の一部をモノクローム処理してみるなど、単なる写実派ではない、本城さんのさまざまな面をたっぷり楽しめる展覧会です。


 出品作は次の通り。

コーヒーミルと頭骨 10F
桃とジョッキー   20F
羽根とジョッキー  20F
カラスアゲハ    2F
ランプと洋梨    6F
砧と麦穂      10P
日本かぼちゃと蒲の穂 8P
人形と浮き     15F
ランプとボトル   10F
本のある静物    20F
籠の中の空壜    30F
釣果・採集     20F
アイロンとインクびん 4F
医の領域「古器物」 130F
裸婦二態「石の卵」 130F
蔵にて「紙の時計 開かない箱」 130F
正二十面体「積み本」 130F
退化の海「アンモンナイト」 130F
消化ポンプと十二面体 30F
貝とボトル     6F
冷蔵器の上の本   20F
リンゴとナイフ   6F(同題2点)
花梨とボトル    6F
薬壜集合      10F
やなぎのまい    6F



婦人のポーズ「インド人の卵」 130F
裸婦の態「No.5 CHANEL」130F
春陽の頃(江部乙) 15F
人形と浮き     15F
籠の中の角錐    30F




 なお、本城さんのアトリエ「大正館」は、もともと絵の題材にしようと集め始めた骨董や古い物であふれています。
 今回は、大正館から富山の置き薬のパッケージのコレクションや、上野山清貢の手紙、軍歌のSPレコード、戦前の列車時刻表といったお宝も、時計台ギャラリーに運び込まれていますので、一緒に楽しんで見てほしいところです。

 上の写真の振り子時計、右端は、一般的な長針と短針のほか、日付を指し示す長い針もついていて、おもしろいつくりです。


 本城さんは、全道展会員、国展準会員。


2014年10月13日(月)~18日(土)午前10時~午後6時(最終日~午後5時)
札幌時計台ギャラリー(中央区北1西3)




【告知】第18回大正館収蔵品展 (2011)
本城義雄油絵展(2009年)
本城義雄個展(2007年、画像なし)
本城義雄油絵展(2003年、画像なし)


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