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■佐藤潤子展 生と再生 (2018年11月8~13日、札幌)

2018年11月13日 21時19分04秒 | 展覧会の紹介-絵画、版画、イラスト
 札幌の佐藤潤子さん、3年ぶりの個展。

 佐藤さんの絵画は「熱い抽象」に分類される。
 カラーフィールドペインティングの冷静な画面とは正反対の、情熱的なしぶきがほとばしる画面だ。生まれ故郷の後志管内岩内町の海を思い出させるような、ダイナミックな画面である。
 今回は、絵の具の飛沫は抑えた作品が多いが、内に秘めた激しさはじゅうぶんに伝わってくる。


 冒頭画像と、2枚目の画像は、会場でいちばん目を引いた「再生」IからVIIIまでの連作。
 50号大の紙が支持体で、それにさまざまなアクリル絵の具を重ねている。

 佐藤さんによると「導入みたいなもの」とのこと。ここで、地に黄色を使って群青を重ねたり、灰色の文字のような線で全体を引き締めたり、あれこれと実験をしてから、他の油彩に取りかかったのだという。
 もともとは、縦に二つずつ並べることも考えていたが、道展の友人と話し合って、すき間なく8点を横に並べることにしたという。

 深い群青色が主調になっており、簡単に「遊び」では片付けられない重みを感じさせる。



 大作「再生と生」V =左=と「再生と生」I。

 前回の個展では、緑やオレンジといった従来にない色彩を数多く用いたが、今回は、それ以前のように、寒色が主体になっている。
 多彩な色を何層も重ねているのはこれまでと同じで、画面に奥行きと深みを与えている。

 画面の半ばを覆う白が、単なる白ではなく、下のレイヤーに多彩な色を隠しているのだ。

 次の画像は、一部の拡大図。


 今回の作品で、もう一つの特徴は、凝ったマチエール。
 表面にガーゼなどを貼り付けている。
 佐藤さんは「遊びです」と話すが、これが、筆勢とは別のリズム感が画面に生まれる要因になっている。

 これらの作品の反対側には、「再生と生」シリーズ制作の合間に描いた「BM」シリーズ4点も並んでいる。
 半分息抜きをかねて描いたものというが、緊張感に満ちた画面づくりは変わっていない。一部の作品は、白を主体とする中にオーカー系の色も差し込んで、異彩を放っている。



 次の画像は左から「再生と生 IV」「生 I」「BM V」。

 佐藤さんの絵は、一見、前衛書のようなカタルシスと即興性を持ち合わせているのだが、構図自体はエスキスを重ねて周到に計算されたものである。
 即興性と構築とが絶妙に両立していることが、作品の魅力を下支えしているのだろうと思った。


 佐藤さんは1957年、岩内生まれ。道展会員。
 以下、道新ぎゃらりーのサイトから略歴をコピペしておきます。

1978 札幌大谷短期大学専攻科美術卒業、札幌大谷中高等学校美術講師
1996 第71回道展会員、札幌市民芸術祭さっぽろ美術展(97’98’99’)
1998 さっぽろ窓辺展(99’00’01’02’)
2000 道展第70回記念会員展(北海道立近代美術館)
2001 岩宇美術家集団展(木田金次郎美術館)
2002 自由美術協会展入選(東京都立美術館)、さいとうギャラリー企画展(以後毎年)
2003 ギャラリーどらーる企画個展
2004 美と創造の夜明け展(横浜赤レンガ倉庫)
2005 道展第75周年記念展(北海道立近代美術館)
2006 LEXUS藻岩企画個展
2010 北海道クリエーター100人展、第1回中山峠美術館展(喜茂別町)
2011 札幌のアーティスト50人展(ギャラリーレタラ、13')
2013 札幌のアーティスト50人展+1仮面展(500m美術館) 
    色彩からの絵画性-女性5人展・「酒井忠康+その仲間たち」展(ギャラリーレタラ)、
    北海道文化団体協議会フェスティバル出展
2014 北海道文化団体協議会芸術選賞受賞
2016 阿部典英と北海道現代作家展(中国黒龍江省美術館)
2017 第1回アジア文化芸術交流展(韓国光州芸総白連ギャラリー)
2018 第4回北海道・黒龍江省国際交流美術展(コンチネンタルギャラリー)
    第1回西安北海道・中日友好美術展(中国西安美術館)
    黒龍江省・北海道国際交流美術展2018(中国黒龍江省美術館)
  
個展(98’01’04’07’08’09’13’15’他)


2018年11月8日(木)~13日(火)午前10時~午後6時(最終日~5時)
道新ぎゃらりー(札幌市中央区大通西3 北海道新聞社本社北一条館「道新プラザ」内)


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