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■いのこはるき作品展 (10月5日まで)

2010年10月04日 00時03分30秒 | 展覧会の紹介-絵画、版画、イラスト
 9月に北網圏北見文化センターで開かれたオホーツク美術協会展で、会友いのこはるきさん(北見)の絵画が3点も展示されているのを見た。

 いずれも原色の絵の具を板の上に躍らせた力強い抽象画。深い青が主調をなす作もあれば、青の中にレモンイエローがぶちまけられて鮮烈な対比をつくっている絵もある。
 これらを目にして思いだしたのは、1950~60年代に日本の団体公募展を襲ったアンフォルメル旋風である。いま、この時代に制作された絵画を実見できる機会は意外と少ないのだが、道内ではいまも八木保次さんがその時代の熱気を受け継ぐような作品に取り組んでいるし、晩年の神田日勝にも影響の一端は見られる。
 レモンイエローの絵を見て脳裡にまず浮かんだのは元永定正であり、70年ぐらいまでは日本でも非常に注目されていたフランス系中国人のザオ・ウーキーであった。
 もちろん、いのこさんの絵がそれらを思わせるからといって酷似しているというわけではない。
 以前は日本の美術界に多かったアンフォルメルふうのパワフルな絵は、いま見ると、かえって新鮮に感じられるのだ。

 今回の個展には30点余りが陳列されている。
 1960年代末の「美芳町にて」などは、一般的な具象の風景画だが、90年代の「貝」などは、栃内忠男さんを思わせる自由闊達な画風に転じる。
 そして、メーンの「無題」は、さまざまな作風の抽象画である。先日の協会展の出品作もあるが、黒く太い線が元気にほとばしる作もあれば、「無題№14」のように、デニム地をばらばらにして段ボールに貼りつけたものを組み合わせた作品もある。

 「癒やし」がブームになっている21世紀の日本では、エネルギーがほとばしったような作品に出会うことは案外少ない。
 若手の作品も、型破りなものよりも、小さくまとまっているものが多いような気がする。 
 絵の具をぶちまけつつも、全体の配置を慎重に考え、絵画世界をつくっていく、いのこさんのパワーに魅了される個展であった。


 なお、案内はがきに印刷されているテキストをここに引いておく。

 つくりたい、ただつくりたい、そのことが作品のはじまりかもしれない。考えもなくおかれた形、色、物がみえて、はじめてイメージや狙いのようなものが生じて感覚が動き出す。真剣になって適当に近づけようとする。その時間が心地よい。何が生じるのだろう、そのワクワク感がまたつくりたいと思わせてくれる。今は、そう思えることを大切にしています。



2010年9月29日(水)~10月5日(火)9:30~5:30(最終日~3:00)
NHKぎゃらりー(北見市北斗町2)



・JR北見駅から1.2キロ、徒歩15分
・「大通」から北海道北見バス「9 緑ケ丘団地線」で「北斗高」降車すぐ


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