ガリバー通信

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「キムジョンイル」の死。

2011年12月20日 | テレビマスコミ
 昨日正午過ぎにテレビ画面に表示された緊急ニューステロップ、「北朝鮮の金正日国家主席急死」に始まった騒動は、北朝鮮国内のみならず日本国内でもトップニュースとして報道され、今日に至る一日中、何処のテレビ局も、このニュースに関する解説や専門家とされる大学教授やジャーナリストをゲストに迎えての特別番組でごった返していた。

 近くて遠い国と言われる北朝鮮、すなわち朝鮮民主主義?人民共和国に纏わる情報は、その信憑性すら疑わしかったり、国内外への宣伝であったり、過剰な反応だったりと、真実がつかめないというジレンマが付きまとう情報が多いので、一瞬目を疑いつつ、17日朝に列車で移動中の車内で心筋梗塞を再発し死亡したということを、一日半経った19日正午に朝鮮中央テレビが、約50日間も姿を見せない現状を取り沙汰されていた、元女優の甲高くて威風堂々のアナウンスを重大な局面に至って必ずする女性アナウンサーの喪服姿での久々の登場で放映し確認されたのである。

 一説には、既に2008年に重度の心筋梗塞で実際の金ジョンイル氏は死亡して、その影武者的人物がテレビ映像などでは紹介されているのだという説もあったが、今年に入って精力的にロシア、中国などを訪問している映像などでは、少し左足を引きづって歩く姿なども映っていて、金正日氏本人が生存したのだが、とにかく急死という事態に、北朝鮮政府、軍隊、そして世襲の権力者とされる三男、金正恩氏への権力移譲が進んでいるが、まだ十分な準備がされていない最中の出来事だけに、混乱や問題が生じないかと、もっぱらの専門家を含む心配、危惧であることは間違いない。

 しかしながら日本のみならずとも、近くて遠い国と言われる北朝鮮の最高権力者であった金正日の死亡というニュースに、これほどまでの時間を費やして憶測も含めて、現状と今後の予測を報道しなければならないものか、ちょっと不思議にすら感じるのは私だけではあるまいと思うのだが、しばらくは続く気配である。

 確かに日本と国際社会にとって、ここ数週間はアメリカと北朝鮮の二国間協議を中心に、北朝鮮人民の食糧が非常に厳しい状況が予測される中、核兵器やウラン増殖の技術をちらつかせながらの、いわゆる「瀬戸際外交」とやらを続け、少しでもいい条件で「食糧支援」を得て、国内の安定を計りたいとの思惑が非常に顕著に伺える中、中東、北アフリカを中心に今年顕著になった「アラブの春」の様な国内の民主化運動や、現体制への不満分子の台頭などを極力避けたい政治的思惑が明らかな最中であった。

 特に北朝鮮との関係も取り沙汰されていたリビアで、あの絶対的権力者として君臨していた「カダフィ大佐」が、民主化運動をとの闘いで、ついに反政府軍に射殺されるという事態が世界中に発信された今年夏を、見聞きしてしていたであろう金一家にとっては、核を外すことは自らの絶対的権力の崩壊に繋がるという不安感が強く、彼らの頭の中には現体制を如何に人民に不満を感じさせずに続けるかが最大の課題となっていたと思われるのである。

 金正日将軍の突然の死亡によって、後継としては誰もが認めてはいるが、まだ28歳になったばかりと思われる金家の三男坊、金正恩氏の軍部を掌握する力やどん底だといわれている北朝鮮の国内経済の建て直しの施策が、如何にスムーズに行われるか否かに、多くの不安と国際的危惧が山積していることは事実で、日本の役割があるのか否か、野田政権も外交には弱いと言われているが、しっかりとした情報分析を背景に、アジアの一大経済大国にのし上がった中国と共に、積極的な外交を展開する待ったなしのチャンス到来と言ってもいいのではないか。

 一般的な国民感情としては、やはり「拉致問題」の解決への前進が関心の的だが、北朝鮮では、先々代の金日成主席が死去した際も約三年間喪に服するという実績があり、今回の金正日氏死去で、後継の正恩氏がどれほどの喪期間を要し、国内問題に一定の目処をつけられるのか、また金正成時代に発生している「拉致」という卑劣な作戦で犠牲になっている日本人生存者の帰還や情報について、新たな調査や期待する決定を下せるか否かは、全く予断を許さない課題である。

 いずれにせよ、三代も国家権力を継承するという、前時代的強権政治が本当は崩壊することが国際社会においては望ましいが、中国、ロシア等以前の東側とされた国々にとっては、北朝鮮の金体制が崩壊などしたら、とんでもない負担、つまり難民や食糧問題だけでなく、西側諸国に属する韓国と直接国境を接するような朝鮮半島の統一国家の実現などは許されない国家にとっては、不利益かつ最大の危機を感じざるを得ない状況になるため、絶対的に阻止したいとの思惑があって、北朝鮮の民主化、金一家の独裁的統治を当分支持せざるを得ないのだそうである。

 テレビ映像では多くの人民が、金総書記の死去を涙で悼む光景が映ってはいたが、大半の人民、国民が飢えにさらされているとの情報もあるので、民主化どころか、明日を生きて行くための食料を如何に得るかが最大の課題であるとすれば、一番の犠牲者である普通の人民が何を感じているか、また軍兵士たちが飢えるということになれば、軍部の反乱や内部的逆襲が起こりうるので、来春の金日成生誕100年歳までは、詳細な情報をキャッチする危機管理能力が、今以上に政府に必要とされる事態であることは間違いない。
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