約一年一ヶ月ぶりに横浜国立大学学生の「中村聡志さん(23歳)」が大阪府豊中市の自宅に帰った。
昨秋イランで武装集団に誘拐され約八ヶ月ぶりに解放されたもので、とんでもない恐怖の連続を乗り越えての無事帰国に、直接は知らない若者の心身の疲労を思うと、感慨ぶかいものがある。
今年四月に同じ武装麻薬密輸団に誘拐されて約一ヶ月間の拘束生活を中村さんと共にしたという、イランの聖職者、ジャワド・タヘリ氏(30歳)によれば、彼は「自分は殺される」という恐怖をずっと感じていたといい、互いに「大丈夫だ」と励まし合っていたそうである。
昨年10月に突然誘拐された中村さんは、イラン南東部の山岳地帯から歩いて移動し、パキスタン領内に逃げ込んで、さらにアフガニスタンにも滞在していたらしい。
滞在していたといっても、眠るのは宿舎やテントすらない山岳部での野宿だったらしく、周囲に常に五、六人の武装した密輸団メンバーが監視する中で、毛布を巻いて眠ったらしい。
武装集団は、機関銃や携帯用対戦車ロケット砲といわれる重装備を携行しており、各自が持つ自動小銃のカラシニコフがおもちゃに見えるほどだったと言う。
関西国際空港に無事帰国した中村さんは、「日本やイランの皆様にご迷惑をかけたと痛感している。申し訳ありませんでした」と語り、拘束誘拐時の詳細や状況については「控えたい」と言及を避けたそうだか、「僕の人生にとって、この八ヶ月を意味のあるものにしたい」と振り返ったという。
彼の経験は想像をはるかに超える恐怖との戦いだったと思うが、今回は「自己責任」論議は巻き起こらなかっただけでも救われた感じである。
数年前にイランでやはり武装集団に誘拐拘束された「高遠菜穂子さんら三人の日本人」の拉致事件の際は、まるで本人たちが犯罪者かの様な世論、マスコミ、政府の言及があり、とんでもないプレッシャーを当人たちは浴びせられた。
今回の事件の真相と裏側に何が隠されているのかは私たちにはほとんどわからないのだが、この八ヶ月間、日本政府とイラン、アフガン、パキスタンとまたがる外交ルートと共に、宗教者や民間人の取引なども絡んだ裏の折衝が続いていたのだろう。
イスラム社会とイデオロギー、そして経済と民族、部族抗争など複雑な中近東の山岳地帯で暗脈する武装集団の数々の中に、自分たちの利害と仲間を守るための戦いが日夜繰り返されているのだろう。
そんな渦中に飛び込んでしまった中村さんは、とんでもない犠牲者となったわけだが、自分の身と健康を守るということがどんなに困難なことか、また大勢の人たちの協力とサポートがなければできなかったことなど重たく知ったことだろう。
私たち一見平和な日々を暮らす者にとっても、自分の心身の健康といのちを守るには、多くの手助けと支援がいることを改めて痛感する機会となった。
昨秋イランで武装集団に誘拐され約八ヶ月ぶりに解放されたもので、とんでもない恐怖の連続を乗り越えての無事帰国に、直接は知らない若者の心身の疲労を思うと、感慨ぶかいものがある。
今年四月に同じ武装麻薬密輸団に誘拐されて約一ヶ月間の拘束生活を中村さんと共にしたという、イランの聖職者、ジャワド・タヘリ氏(30歳)によれば、彼は「自分は殺される」という恐怖をずっと感じていたといい、互いに「大丈夫だ」と励まし合っていたそうである。
昨年10月に突然誘拐された中村さんは、イラン南東部の山岳地帯から歩いて移動し、パキスタン領内に逃げ込んで、さらにアフガニスタンにも滞在していたらしい。
滞在していたといっても、眠るのは宿舎やテントすらない山岳部での野宿だったらしく、周囲に常に五、六人の武装した密輸団メンバーが監視する中で、毛布を巻いて眠ったらしい。
武装集団は、機関銃や携帯用対戦車ロケット砲といわれる重装備を携行しており、各自が持つ自動小銃のカラシニコフがおもちゃに見えるほどだったと言う。
関西国際空港に無事帰国した中村さんは、「日本やイランの皆様にご迷惑をかけたと痛感している。申し訳ありませんでした」と語り、拘束誘拐時の詳細や状況については「控えたい」と言及を避けたそうだか、「僕の人生にとって、この八ヶ月を意味のあるものにしたい」と振り返ったという。
彼の経験は想像をはるかに超える恐怖との戦いだったと思うが、今回は「自己責任」論議は巻き起こらなかっただけでも救われた感じである。
数年前にイランでやはり武装集団に誘拐拘束された「高遠菜穂子さんら三人の日本人」の拉致事件の際は、まるで本人たちが犯罪者かの様な世論、マスコミ、政府の言及があり、とんでもないプレッシャーを当人たちは浴びせられた。
今回の事件の真相と裏側に何が隠されているのかは私たちにはほとんどわからないのだが、この八ヶ月間、日本政府とイラン、アフガン、パキスタンとまたがる外交ルートと共に、宗教者や民間人の取引なども絡んだ裏の折衝が続いていたのだろう。
イスラム社会とイデオロギー、そして経済と民族、部族抗争など複雑な中近東の山岳地帯で暗脈する武装集団の数々の中に、自分たちの利害と仲間を守るための戦いが日夜繰り返されているのだろう。
そんな渦中に飛び込んでしまった中村さんは、とんでもない犠牲者となったわけだが、自分の身と健康を守るということがどんなに困難なことか、また大勢の人たちの協力とサポートがなければできなかったことなど重たく知ったことだろう。
私たち一見平和な日々を暮らす者にとっても、自分の心身の健康といのちを守るには、多くの手助けと支援がいることを改めて痛感する機会となった。