寿司が高級になって行くのは余り歓迎すべきことではない。
単純に個人的には懐の問題もあり、時節柄、一般客の感覚から
遊離してゆく恐れが十分あるともいえる。寿司はあんまり贅沢品に
なってもらっちゃあ、寿司好きとして困るのだ。
まぁ、鮨屋のおやじといっても、一国一城の主(あるじ)だ、
それなりにいい上客でも掴んでいるのだろうがね。
ここは三ツ寺筋から、この6月頃に新店に移ってきた。
なかなか見つけにくい場所にひっそりとある。
まずは、さえずりと煮あわび(姫鮑)。鯨が出るのは大阪らしい。
つかみは効いてるが、はたして片方の油っこさはコントラストとして
どうか。
ムラサキウニ (北海道) その場で割る。視覚的効果バツグン
毛ガニ(北海道)
岩がき(的矢) ポン酢
アユ 焦げがないのもそそらぬが、これは焦げすぎでは。
ここいらまでの一品物がいかにも割烹風なのが、関西風。
それなりに高いレベルではあり、これで酒も進むのでだが、はたして寿司屋の一品としてはこれでいいいのだろうか・・・との思いがかすめる。
東京の多くの寿司屋のように、寿司種をチョイチョイと切ったり、貝やら穴子のきじ焼きやらサヨリの皮なんぞをちょっと炙ったりする程度で銚子の2,3本も呑ませるのが一番寿司屋としては適当なのではあるまいか。寿司屋は料理屋ではないのだから・・・この思いは関西の寿司屋で度々感じることである。
つまりイントロを短くして寿司の部に突入する。
そうすりゃ懐の傷も、もう少し浅くて済むぢゃないか。
マコガレイ 塩 ミコはとっても幸せなの・・・(古い人しか分らない)
このあと、イカがあって。
まぐろ赤身 煮切り醤油
ふり柚子はヘモグロビンの酸味には合わないような気がした。
白身で効果的に使った方がいいのでは。
トロ 一瞬真っ赤に焼いた網でジュッと焼き目をつける。
対面の客の視線を意識したケレンだなぁ。
コハダ 山口瞳氏の色紙、「一個なら小肌」を思い出す。
なんでもない素材だが、寿司以外には向かない魚だ。
アカウニ(淡路) キュウリの笠、塩
胡瓜のシャキシャキとウニのとろり、甘さと少しの青臭さがいい調和。
大ハマグリ(千葉) 酒蒸しなのか、これは江戸風を踏襲した方が姿が良いのでは。
アユ 華屋与兵衛の寿司を採録した明治の寿司本にもこの鮎寿司は
載ってはいたが、丸のまま使うものだった。だから古い寿司ではある。
車海老
上半身はあてでそのまま、
下半身はにぎりで。尾は付けておいた方が華やかだろう。
赤貝と山芋の手巻き
海苔の風味と山芋の歯ざわりに比べ、赤貝の印象が薄い気がする。
手巻きを一つ変化球で挟むところなんざ、面白い。
煮穴子 うへっと言うほど多量のワサビを乗せるが、脂の加減か辛くなく、風味になるだけだった。
ここでばちこ? いつまでも呑んでたからかな・・・。
まぁ、あんまり偉そうなことは言えやしねぇ。燗酒は菊正。
焼きずし とろ、大葉、胡麻
とろ巻きを裏に巻いて、酢飯の方を炙る。趣向面白い。
玉子
一方はすし飯を噛まして。
まるでカステラ、夏と冬で焼き方を変えるという。
東京風関西式を標ぼう。魚は黒門市場。
ボクより年上の森岡さん、しゃべりもたつ。
なかなかキタに比べて江戸前寿司が根付かないのが南地。
まだまだ「ネタは活かってる方がいいに決まってる」という人も多い。
寿司は活けだけぢゃない、という寿司世界を知らしめるために、
お客をリードして根付かせ、しっかり儲けていただきたい。
鮨 森岡 中央区宗右衛門町5 玉屋町
この手の物には 弱いんだ。かなりよわい。しかし、最近財布とも相談しないと
徐々に へそくりの底が見えだした。
しかし、うまいものは食べたい。借金してまで食べるなんて いきだねーって行きたいね。
そうですね。寿司自体が最高のツマミなわけですから。
魚を揃えるというのはいろいろとリスキーなのか、価格的には東京とそんなに変わらないのでしてね。銀座のすきやばし次郎さんのことを考えると安いですけど。ああ、あっちは三ツ星でしたね。そうですなぁ、大1枚ぐらいで収まればありがたいのですけどね。それでもそんなには行けやしませんが。ヘソクリの底…いえいえ、ドイツで織田無道のコメント書けば、何十回行けるか。
飲みのシンゾーさん
かつてどこいらの評論家の、寿司にはお茶…を真に受けて、寿司になると律儀にお茶に切り替えていましたが、京都の松鮨で「お酒に合う寿司をお出ししましょう」と言われてアホみたいに飲んでからどうもタガが外れて、寿司突入しても酒をだらだら続けてしまいます。
だって最高の魚を持ってるんですもんね。