雲と一緒にあの山越えて
行けば街道は日本晴れ
俺ら旅人 一本刀
(おひけぇなさんせ、おひけぇなすって)
腕と度胸ぢゃ負けないけれど
なぜか女にゃチョイと弱い
大人になってから「てなもんや…」を見返し、ABCホールの舞台にあれだけのセットを、たとえば、うっそうとした山賊が出てくるような山の中の街道を、よく作ったものだと驚いた。
30分の公開生番組である。すさまじいことをしていたものだ。今やそれだけの情熱と予算とノウハウもないのではないか。
あの公開バラエティを作っていた時の熱気よ、今一度!
てなもんやと同時進行していたのか、「スチャラカ社員」の頃から見ている。太っていた頃のダイラケ、川上のぼる、ときどき横山エンタツも出演していた。役者の子供で東京生まれだが、すぐ関西へ来て環境に順応し、大阪弁を自在に操ったという点では、ミヤコ蝶々と同じ。
主役のあんかけの時次郎に藤田まこと。相棒の小坊主珍念に白木みのる。ひばりの弟・香川武彦も出ていた。写真屋蛇口一角に財津一郎。漫画トリオ、鳳啓助京唄子、やすきよ…数多のアイドル歌手が出てきて、一曲歌った。
身体もよく動いた。ひとが芝居している時の藤田の身体は決して休んでいない。ぼっと立っている時にその人の真価が出る。
われわれ関西の子供の週末は、「てなもんや」なしには語れない。『てなてなもんや~てなもんや~』などと、主題歌歌いながら洟拭き拭き走り回った。
友達は一家で食卓で見ていて、芦屋雁之助が女形から急に男ですごむシーン「いややわ、ウチら…何言うてけつかんねん!」みたいなとこで、ブ~ッとおじやを吹いて食卓ムチャクチャにした、と証言する。
「オレがこんなに強いのも、あたり前田のクラッカー!」
必ず一度は口にした台詞ではなかろうか。堺に工場がある。
歌がむちゃくちゃ上手かった。甘い歌声ということでは植木等と双璧といえるだろう。(小林信彦が指摘していたか)
ある時から、馬面つながりで、アンソニークインあたりを意識し出したのではなるまいか。必殺シリーズぐらいからシリアス一辺倒になってしまったが、もう一度あの軽みのある芝居を見たかったな。「50年後のてなもんや・・・」見たかった。 合掌。
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藤田まことと言えば、十三のね~ちゃんと必殺でした。
合掌。