某日、東山・建仁寺の祇園丸山さんへ。
北側には開祖栄西が喫茶を伝えた臨済宗建仁寺。例のミシュランの発表会もここで行われました。斜め向かい側には人気店「さ々木」があり、静かな中に、京都屈指の美食地帯となっています。
雨にぬれた草木や庭石はしっとりとした気分にさせてくれます。竹筒の流水は地下水を引き込んでいて、見てる間にも何処かが汲み上げていると水量が減ったりする。
こうした日本家屋の庭に花を咲かせたりしない。
花は床の間におくものらしい。
高台寺土井で修業し、菊乃井、和久傳を経て、ご自分の店を祇園に出した丸山さん。一代でここまでできるのが凄い。
丸山さんの物の見方に影響を与えたのは、土井の女将さん。
土井は二千坪からの庭があり、岸・佐藤など歴代首相が訪れ、まず風呂へ入り、庭を散歩して、ゆっくりと酒食を楽しんだ。そのために蛍や蝶、カジカを庭に放したという。「料理ではなく、時間を食べている」のだと悟ったという。事業仕分けもない時代、世の中のんびりしてたんですなぁ。料亭受難の時代です。
こちらは、別日に撮影させてもらった瓢箪の酒器。
3つの陶器製の猪口は、傍らの賽の目をふり、それによって酒を飲まされる趣向。緊張するお客さんをこうした座興でもてなすのも祇園の芸舞妓の仕事だったそうだ。
秋の料理。
代白柿の海胆射込み。和牛、車海老、アワビ、栗など吹きよせの石焼き。冷と熱のコントラスト。酒は初しぼり。一瞬の秋をこの盆の上で活写する。 お見事!
さぁ、我々もいただきませう。
先付け 霧が吹かれた縁高盆 朱盃と葛の葉の色彩。
朱盃につがれるのは、キンモクセイのリキュール。
つなぎ団子は祇園花街の紋章。柔らかに団結を表す。
お姉さんに注がれてクイッ、おめでたい心持になります。
胡桃豆腐 いくら、たたきオクラ、胡桃
サッサッサッ…サービスにあたるお姉さん方の着物の衣擦れの音がええもんです。心地よい緊張感を呼び起こします。
まぁ、冷たいところから・・・。
何度もこちらに来てますが、ここでいやな目に会ったことありません。同じ祇園でとある料理屋に行ったところ、お運びのねえさんが終始ドタドタ・ガラッ…というガサツなサービスだったことがあり、料理の味が飛んでしまったことがあります。
俗世間を忘れて、京都を味わいたいのですから、昔ながらの祇園へ=つまりは別世界に誘ってくれなければ意味ありません。
お椀が先に来ます。
懐石料理ではお椀が最大のメインといってもいいでしょう。
鱧 道明寺仕立て(炙り)
結び湯葉 青柚子
造り 鯛、烏賊
よく切れる包丁で切ると鯛の断面がぷっくり艶々いたします。
こんなのに変えて・・・玉の光純米酒 甘露ですなぁ。
これもまた瓢箪。縁起物であると共に、緊張感~なごやかさ~また締めるところは締める、という道理がこめられる。緩んだら緩みっぱなしではいけないということ。分かっちゃいるんだけど。
徳利がくっつかないように、受け皿の上にはさりげない工夫。
焼きもの すずき、胡瓜あん、みょうが
お凌ぎ 小さな煮麺 温泉卵 大葉
炊合せ 小芋・いんげん・ごぼう・かぼちゃ・なす・椎茸・蓮根
酒肴 もはや後半だが、これが出るのだから酒を追加。
いちじく田楽
なすのように見せる擬態ですな。
鯛 煮凍り 枝豆
白和え、生海胆
こういうので延々、ず~~っと飲んでいたい。
でも、そうもいかないのです。
釜炊きごはん 香の物 赤だし
土鍋のごはんをふんわりとよそってくれる。
水菓子 柿?のソルベ 巨峰 なし
まんぞく、まんぞく。
料理だけでなく、もてなし、しつらえ。さすがは丸山さん、緻密にして隙がありません。
クレバーでともすれば冷たい感じも与えるかもしれませんが、丸山さん、情熱の人です。面白がったら突っ走る人です。そこが傍から見ていると面白く、でも下で働く人たちは、その面白がりようを理解するのは大抵ではないと感じました。古典回帰を旗印につなぎ団子で行ってください。
さぁ、ぷらっぷら歩いて河原町まで出ましょ。
建仁寺祇園丸山 京都市東山区建仁寺正門東入
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