ブログ「風の谷」  再エネは原発体制を補完する新利権構造

原発事故は放射能による公害。追加被曝阻止⇒放射性廃棄物は拡散してはいけない⇒再エネは放射能拡散につながる⇒検証を!

樹木における放射性セシウム汚染の現状を見ると、CLTやバイオマスは無理だとわかるのになぜ国策化?

2015-07-01 | CLT バイオマス 木

 

森林遺伝育種 第2巻(2013) 117 【話題】 樹木における放射性セシウム汚染の現状と課題  金指 努・杉浦佑樹・竹中千里 

はじめに

2011年3 月11日の東日本大震災によって引き起こされた東京電力福島第一原子力発電所事故は、大量の放射性物質を環境に放出し、現在も地域の農林水産業に深刻な被害をもたらしている。本稿では、 放射性セシウムによる林業への影響について、今後の対策を考えていく一助とするために、樹木の放射能汚染に関わる現状と課題についてまとめる。

樹木の放射能汚染問題

厚生労働省は、食品の安全性を確認するために、 事故直後の2011 年3 月16 日からさまざまな農産物 の放射能測定を行い、公表を続けている(厚労省)。 事故直後は、ホウレンソウを始めとする葉物野菜に おいて、食品の基準値(当時は 500 Bq/kg)(注 1) 以上の放射性セシウムを含む検体の存在が報告されており、5 月以降になると、茶、ユズなど木本の農産物で高濃度の放射性セシウムの存在が報告される ようになった(厚生労働省)。

さらに、福島県の特 産品であるモモにおいても、基準値以下ではあるものの、果実で放射性セシウムが検出された。モモは落葉樹であり事故直後の放射性物質が沈着した時点 で葉がなかったことから、樹体の地上部に沈着した 放射性セシウムが樹皮表面などから表面吸収されたと考えられ(Tanaka 2013)、除染のために樹皮の高 圧洗浄の処置がなされた。

事故後 2 年以上経過した 2013 年の春になると、ほとんどの栽培農産物で放射性セシウムが不検出であるのに対し、タラノメやコシアブラなどの樹木の新芽である山菜において、食品の新基準値(100 Bq/kg) を超える値が報告されていることは注目に値する (厚生労働省)。

林産物であるキノコ類は放射性セシウムの吸収能力が高いことが知られている(Byrne 1988)。事故直後の 4 月には、露地もののシイタケで 6,000 Bq/kg を超えるセシウム 137 の値が報告されている(厚生労働省)。

それを受けて林野庁は、2011 年 10 月に、 きのこ原木の当面の指標値を 50 Bq/kg(注2)と定めている(林野庁 2011a)。また、同年11 月には薪ストーブ用の薪についても、40 Bq/kg という厳しい 指標値が林野庁よりうちだされ(林野庁 2011b)、 きのこ原木や薪の主要な産地である福島県では、広葉樹林の放射能汚染が地元の産業に大きな影響を与 えている。

一方木材に関しては、2011年の調査結果 で得られた幹材での最大値 497 Bq/kg という値につ いて、林野庁は、人体への影響はほとんどないとい う見解を示している(林野庁 2012)。


樹木葉中の放射性セシウム

筆者らは 2011 年 5 月から、福島県内各地で樹木の当年葉の採取を行い、放射性セシウム濃度を測定している。5 月の調査において同一地点で採取した草本および落葉広葉樹の葉について、オートラジオグラフィーにより放射性物質の存在の有無を見た画像 が写真 1 である。このイメージングプレート画像に おいて、黒っぽく見える部分に放射性物質が含まれ ている。

春先の成長が著しい草本植物に放射性物質 が見られるのではないかという当初の予想とは異な り、草本植物で画像は得られず、クリやサクラといった落葉広葉樹の葉において、放射性物質の存在が認められた。γ 線スペクトロメトリにより、これら の試料ではセシウム134 とセシウム137 が検出された。

3 月の事故時点で着葉がなかったこれらの植物の葉に放射性セシウムが検出される理由として、一度周囲に沈着した放射性セシウムが再拡散して葉表面に付着した可能性と、事故時点で存在していた植 物体により吸収された可能性の二通りが考えられた。

しかしながら、同一地点で同時期に採取した草本植物では放射性物質の存在が認められなかったことから、写真−1 の広葉樹の葉で見られた放射性セシウム は、再拡散による付着ではなく、植物体によって吸収されたものであることが推察される。

 

 写真−1 オートラジオグラフィーによる放射性物質 の検出 −草本と落葉広葉樹の葉− 2011 年福島県伊達市にて採取。48 時間曝写。  

 

 一方常緑樹は、放射性物質が降下した時点で着葉 していたため、樹冠表面への沈着量が多い。2011 年 6 月から 8 月に実施された常緑針葉樹のスギ林と落葉広葉樹林における調査によれば、スギ林のほうが 林内の空間線量率および樹冠における放射性セシウ ム存在量が高かったことが報告されている(文部科 学省 2011)。 常緑広葉樹であるシラカシのオートラジオグラフィー画像(写真−2)では、事故当時に存在していた 葉には点状に放射性物質の存在が認められるのに対 し、事故後に展開した葉では薄く葉形の画像が見られる。

このことから、事故後に展開した葉は、落葉樹の葉と同様に植物体中に吸収され、新葉に移行していったものと考えられる。 放射性セシウムが植物体のどこから吸収されたのか、すなわち、経根吸収なのか表面吸収なのかという疑問に対しては、明確な解答は得られていない。

その理由のひとつとして、事故直後に沈着した放射性セシウムがどのような化学形態であったかが不明であることが挙げられる。おそらく、セシウムイオンとして降雨やエアロゾル中に存在したセシウムが吸収されたものと推測されるが、オートラジオグラフィーで認められる粒子状物質の正体が明らかになっていないため、沈着時の放射性セシウムの挙動についての議論は難しい。

さらに、地上部での表面吸 収を考える場合には、どのような部位で吸収効率が高いのか、また経根吸収においては、根の張り方や 地表面のリターの状態など、吸収に関わる因子が整理されていないことも、樹木における放射性セシウムの分布や動態の把握を困難にしているといえる。

 写真−2 オートラジオグラフィーによる放射性物質 の検出 −シラカシ(幼樹)の葉− 2012 年 3 月福島県福島市にて採取。90 時間曝写。

 

樹幹中の放射性セシウム

今回の事故において放射性セシウムにより材の内部がどの程度汚染されたのかは、今後の木材利用を考える上で、非常に重要な問題である。

Kuroda et al (2013)は、事故から 1 年半後に、福島県内 3 カ所 から採取したスギ、アカマツ、コナラの地上 0.5 m から 3 m の樹幹における樹皮、辺材、心材部中の放 射性セシウム濃度を測定している。その結果、いずれの樹種でも樹皮中の濃度が最も高く、さらに放射性セシウム沈着量が多い地点のスギについては、心材からも検出されたことを報告している。樹皮においては、葉と同様に、沈着した粒子状の放射性セシウムが付着したままの状態であることが、高濃度で検出される原因と考えられる(写真−3)。

一方、スギ立木の垂直分布を調べた報告によれば(小川 2013)、 樹高の高い位置(16.5 m)から採取した円盤では、 随心位置において周囲より高い放射性物質が検出されている。

同一地点の樹高 0.5 m から採取した円盤では樹皮側で高い放射性セシウムが検出されていることから、樹幹内の面分布は高さによって異なることが示された。

写真−3 オートラジオグラフィーによる放射性物質 の検出 −スギ樹皮− 2011 年 5 月福島県郡山市および名古屋市にて採取。 48 時間曝写。

 

材内部における放射性セシウムの分布に関しては、 チェルノブイリ事故後 10 年経過した Pinus sylvestrisBetula pendula について、Soukhova et al.(2003) が報告している。

年輪中では、事故が起こった1986年の年輪に多いわけではなく、樹種や生育地の環境によって分布が異なり、P. sylvestris では辺材部に、 B. pendula では条件によって年輪の中心方向に向かって放射性セシウムが多く存在することが示されている。

彼らは、この樹種による分布の違いは、材の放射組織の構造が異なるためと述べている。 葉と同様に、現在樹幹内に存在する放射性セシウムが、表面吸収によるものなのか、経根吸収によるものなのかは不明であり、樹幹内の分布が高さ方向 で異なったという結果も、吸収部位の影響による可能性が考えられる。表面吸収に由来する放射性セシウムが存在したとしても、いずれ時間経過とともに、 経根吸収を主とした放射性セシウムの樹体内の輸送や蓄積が、定常状態へと移行していくと考えられる。


スギ枝における放射性セシウムの分布と輸送

スギ人工林は福島県の森林面積の 54%を占めてお り、放射性物質の林業への影響を評価するためには、 スギにおける放射性物質の動態を追跡することは必 須である。常緑針葉樹のスギは、当年に伸長した葉 の先端から翌年の葉が伸長する。そして古い葉は枝 化していく。早い場合は 3 年生の葉で枝化が始まる 場合もある。

スギ葉の寿命は一律ではなく、小林・ 田代(2003)は 3 年から 4 年、宮浦ほか(1995)では 5 年から 6 年と報告している。スギ葉は枯死すると枝ごと落下するが、そのまま数年樹上にとどまる場合も多い(Yoshida and Hijii 2006)。このように葉の伸長、落葉方式が他樹種と異なるスギにおいては、 放射性セシウムの動態も特徴的であることが推察される。 

2012年12月に福島県内で採取したスギ葉におけ る放射性物質の分布を、オートラジオグラフィーに より確認した(写真−4)。事故前に伸長し現時点でも 緑葉として樹冠に存在している部分からスポット状 に強い放射性物質が検出されたため、スギにおいても事故直後に沈着した放射性物質が表面に残存していることが確認された。

また、2011 年、2012 年に伸長した部分には粒子状物質は見られず、針葉の形に 放射性物質が認められたことから、放射性セシウムがスギ樹体内に取り込まれて輸送されたものと推察された。

 

 

 写真−4 オートラジオグラフィーによる放射性物質 の検出 −スギ枝と雄花− 2012 年 12 月福島県富岡町にて採取。60 時間曝写。

写真−4 で明らかなように、新しく伸長した針葉に 輸送された放射性セシウムは、葉の先端部位(雄花 部分)に濃縮されている。雄花中の花粉にも放射性 セシウムが移行していることは、すでに報告されて いる(竹中・清野 2012)。花粉に移行した放射性セ シウムは、飛散して雄花から放出されるが、雄花の付け根部分は、次の新葉の基部となる場合があり、 さらに新葉へ輸送されることが予想される。

しかし ながら、旧葉から新葉への輸送における量的な関係 についてはまだ不明である。なぜならば、事故から 2 年程度しか経っていない現在の状況では、葉齢による放射性セシウム濃度の分布に一定の法則性が見出されておらず、樹体における放射性セシウム輸送が定常状態になっているとは言えないからである。

Rantavaara et al. (2012) は、スウェーデンにおける Picea abiesPinus sylvestris について、葉齢による 放射性セシウム濃度の変化を報告している。1994、 1995、1996 年に伸長した葉に含まれる、チェルノブ イリ原子力発電所事故由来のセシウム 137 濃度の測定結果では、両樹種ともに、最も新しい 1996 年の葉において濃度が高く、1995 年、1994 年と葉齢が高く なるにつれて減少している。

この研究ではチェルノ ブイリ原子力発電所事故から 10 年経過した 1996 年 に試料採取がおこなわれており、葉へ直接沈着した 放射性セシウムの影響はなくなっていることが推測 されるため、樹体におけるセシウムの吸収・輸送は定常状態になっているものと判断される。スギにおいても、今後、放射性セシウムの輸送が定常状態になったのち、新葉部において放射性セシウム濃度が高くなることは大いに考えられる。 

 

おわりに

以上述べてきたように、樹木における放射性セシウムの動態については未解明な部分が多く、ましてや森林生態系での動きについてはさらに複雑であり、 チェルノブイリ事故以降にヨーロッパを中心に行わ れた研究では得られていない知見が多々あるものと 推察される。特に、土壌中での放射性セシウムの分布や形態、微生物と樹木の相互作用においては、暖温帯である日本の環境条件下で起こっている特徴的な事象として解明すべき点が多いと思われる。

事故後2年経過した現時点でも、樹体に直接付着した状 態の放射性セシウムの影響が強く残っており、森林 生態系内における放射性セシウムの循環が定常状態に達しているとはいえない。しかし、森林の除染をどうするのか、木材利用をどうするのか、といった住民の切実な問題については、定常状態に達するのを待つのではなく、現時点で得られている情報に基づいて、迅速に対応策を考えていく必要があるのではないだろうか。 

注 1:食品に含まれる放射能の測定値は生重ベース。

注 2:きのこ原木、薪に含まれる放射能の測定値は 乾重ベース。 

 


 

(管理人より) 2013年に発表された名古屋大学大学院生命農学研究科の論文を全文転載しました。

これを見ると、放射性セシウムは移動し、その動態は未解明、葉も幹も汚染されているということがわかります。

つまり、放射能汚染が明らかな地域で木を伐採して、ペレットや材木に加工した場合、どこにどんな汚染があるかわからないということを意味しています。

上の論文には 「木材に関しては、2011年の調査結果 で得られた幹材での最大値 497 Bq/kg という値につ いて、林野庁は、人体への影響はほとんどないという見解を示している(林野庁 2012)」

と書いてあります。

約500ベクレル/kgを問題ないとする林野庁の見解です。 

これを適応されたらどうなるか考えてみます。

デビル-カベリンG他.農業における対策:チェルノブイリ事故後15年における効率の評価。その教訓。(2001年キエフ国際会議のプロシーディング)
国連人道問題調整部、ニューヨーク(2001)118-128
翻訳責任 国際医療福祉大学 鈴木元

この中に 「地表のみの汚染時の放射線の飛跡図」というイメージ図があります。

もし、高濃度に汚染された木でCLTを作り、それで住宅を建てた場合、天井や壁や床などCLTですべて囲まれるわけですから、CLT中の放射性物質から放射線が飛び出す生活空間の中で暮らすことになるのではないでしょうか?

 

 

PET検査前のトイレは管理区域の中に作るべき?  

より 図は、床を汚染した100個のF-18が崩壊した際の放射線の飛跡(汚染面積は900cm2)(青は陽電子、赤は電子、黒は光子の飛跡を示す)

 

こういう図を見ると放射線が突き刺さる感じがよくわかります。外部被曝でDNA二本鎖切断が起こり、修復する暇がないのではないかと懸念します。

 

 

 東日本に大量に降り注いだのはセシウムだけではありません。

ペレットや薪にして、ストーブで燃やせばどうなるか、チェルノブイリの教訓は忘れたのでしょうか?

微粒子を体に取り込んで、体内でこうなります。

 

燃やしたあとの灰はどうするんでしょうか?西日本でセメントにするのかもしれません。

 

 参考

福島県全域から汚染木材を集めて加工するCLT工場を、あの大熊町に建設。木の中心部分の汚染は2000bq/kg!

汚染状況重点調査地域でCLTの実証事業。福島産の木材が岡山県の工場でCLTに加工される!

 

 


コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。