自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

☆「焚きつけ」の任命責任はどうなのか

2019年10月14日 | ⇒メディア時評

     台風19号の被害が日を追うごとに拡大している。北陸に住む自身にとっては、千曲川の堤防決壊で長野市にある新幹線車両センターの北陸新幹線の車両が水に浸かった画像はショックだった=写真・上=。豪雪にも強いと頼っていた北陸新幹線だけに、10編成、120車両が並んで水に浸かっている様子は痛々しい。13日始発から金沢―東京間がすべて運休。浸水が床上に及んでいる場合は電子機械や変圧器の取り換えが不可能となり、廃車となる可能性もあると指摘されている。今後金沢への観光客が激減するだろう。さまざな後遺症が出てきそうだ。

  話はがらりと変わる。このニュースに接して、任命責任はどうなのか、と問いたい。韓国の文在寅大統領の側近で、家族を含めてさまざまな疑惑が出ている曺国(チョ・グク)法務部長官がきょう14日付で辞任することを明らかにしたとメディア各社が伝えている。韓国の聯合ニュースWeb版=写真・下=にアクセスすると、「조국, 취임 35일만에 사의 "檢개혁 불쏘시개 역할은 여기까지" 」(法相、35日で辞意表明 “検察改革焚きつけ役割はここまで”=グーグル翻訳)との見出しで詳細に報じている。以下、要約する。 

  曺法務部長官は14日、電撃的に辞意を明らかにした。先月9日に就任して35日目となる同日午後2時に「検察改革のための焚きつけ役割はここまでです」という声明文を出して辞意を明らかにした。長官は「検察改革は学者や知識人としての私のライフワークの使命であり、長い間悩んで追求してきた目標であった」としながらも、家族をめぐるいくつかの疑惑と検察の捜査があり、「これ以上大統領と政府に負担をかけてはならないと判断した」と述べた。さらに、検察改革の完遂が近づいてきたと明らかにし、「私は検察改革のための『焚きつけ』に過ぎない。その役割はここまで」と声明文で述べた。

  曺氏の辞意表明を受けて、文大統領は「結果的に国民の間に多くの葛藤を引き起こしたことについて非常に遺憾に思う」と謝罪し、「検察改革は最も重要な国政目標であり、完全な実現のために最後までやり遂げる」とのコメントを発表している。

  今月3日、ソウルでは文大統領に退陣を要求する大規模なデモがあり、「法務部長官、辞退を」と叫ぶ数十万人が光化門からソウル駅の2.1㌔㍍を埋め尽くした(韓国・中央日報)。9月28日に行われた大統領支持派のデモと同規模で、まさに「国民の間に葛藤」を起こす大問題になっていた。

  そもそも「玉ねぎ」ように次から次と疑惑は曺国氏の長官就任前から出ていた。曺氏の妻が娘の大学院進学に有利になるよう東洋大総長名義の表彰状を偽造したとされる事件。妻はその後、私文書偽造の罪で在宅起訴されている。不正入学疑惑では、すでに娘や息子も聴取するなど異例の捜査展開となっている。

  曺氏の長官就任直後の大統領支持率は韓国ギャラップによると、9月第3週の調査では支持率が40%(前回43%)、不支持率53%(同49%)で、支持率は落ち込んでいた。支持しない主な理由はやはり曺国氏を法務部長官に任命した人事問題だった。世論を甘く見て、長官任命を押し切ったことに、その任命責任は問われないのだろうか。曺氏の辞任で政権の求心力は再び高まるとはとても思えない。

⇒14日(祝)午後・金沢の天気    くもり

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