自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

☆台風19号と災害報道の持続可能性

2019年10月28日 | ⇒メディア時評

   数ある自然災害でも今年は「台風の年」として記録されるだろう。関東に上陸した観測史上最強クラスの勢力とされた15号を始め、19号、そして21号で風害と水害が連続した。中でも、19号は死亡88人、行方不明7人と甚大な被害をもたらした。

   きょうニュースで、政府は非常災害対策本部の会議を開き、19号による災害を激甚災害とともに大規模災害復興法の非常災害に指定することをあす(29日)閣議で決定し、国が被災自治体に代わって道路などの復旧工事を進めていく方針だと報じている(NHKニュース)。大規模災害復興法は東日本大震災の後、2013年に施行された法律で、非常災害への指定は震度7度だった熊本地震(2016)に次いで2例目となる。

   19号はTVメディアに「視聴率の記録」もつくった。NHKは12日午前9時台から特番態勢だった。19号が静岡・伊豆半島に上陸したのは午後7時ごろ。19号の最新情報を伝えたNHK「ニュース645」(午後6時45分-同7時00分)の視聴率が38.3%(関東地区、ビデオリサーチ調べ)を記録した。ビデオリサーチ社が公表している「週間高世帯視聴率」(関東地方)によると、10月7日から10月13日の週の報道部門ランキングで、「ニュース645」を筆頭にベスト10がすべて12日のNHK台風関連番組だったという、前代未聞の記録を打ち立てた。ちなみにこの週の最高視聴率は翌日、13日の日本テレビ「ラグビーW杯・日本vsスコットランド戦」(午後7時30分-同9時54分)の39.2%だった。                     

   では、関東直撃の19号を民放はどう報じたのか。TBSは午後3時から報道特番を始め同6時50分まで、4時間近く台風関連のニュースを報じ、同10時からの「新・情報7daysニュースキャスター」でも台風情報を詳しく伝えていた。日テレは午後5時からの「news every」で台風関連ニュースを報じ、その後のアニメや「天才!志村どうぶつ園」を休止し、午後8時まで3時間枠を台風関連に充てた。テレ朝もアニメなどを休止して夕方1時間30分、さらに午後9時の「とんねるずのスポーツ王は俺だ!!」の放送日を変更し、合計4時間を台風関連番組としていた。これらの台風関連番組をリモコンでザッピングしながら視聴をしていたが、情報の量と速さ、ネットワークといった点では、頑丈な報道体制を有するNHKが存在感を発揮していた。民放には正直、心もとなさを感じた。

   自然災害は19号に象徴される台風と豪雨・洪水だけではない。豪雪、干ばつ、地震、津波、火山噴火、土石流・地滑りなど、日本の災害は多様だ。狂暴化し、広域化する自然災害に民放の報道体制は耐えうるのだろうか。災害報道の持続可能性を民放は検証してはどうだろうか。
(※写真は、台風19号による千曲川の決壊で北陸新幹線120両が水に浸かった様子を伝える新聞各紙)

⇒28日(月)午後・金沢の天気   はれ

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