自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

★「復興先導プロジェクト」って何だ~3 祭りと能登人の気概

2024年05月23日 | ⇒ドキュメント回廊

       能登半島地震を超えて新しい能登を創造する夢のある思い切ったプロジェクトを石川県が掲げる『創造的復興リーディングプロジェクト』。13の取り組みのうち、今回は【9】能登の「祭り」の再興、の可能性を探ってみる。

  祭りが能登復興のリーディングプロジェクトとして掲げられたのも、能登では「1年365日は祭りの日のためにある」、「盆や正月に帰らんでいい、祭りの日には帰って来いよ」という言葉があるくらい能登人は祭りが好きだからだ。ところが、震災で能登で一番大きな祭りとして知られ、ユネスコの無形文化遺産にも登録されている七尾市の青柏祭(5月3-5日)の曳山巡行が中止となった。地元で「でか山」と呼ばれる曳山の大きさは高さ12㍍、ビルにして4階建ての高さ=写真・上、七尾市役所公式サイトより=。地元の人たちも「日本で一番でかい」と自慢していただけに、「やっぱりダメか」と地元だけでなく、能登にもショックが走った。

  「青柏祭でか山保存会」が総会(2月14日)を開き、中止を決めた理由は道路事情だった。曳山の巡行ルートが地震で大きく破損しており、安全確保ができないとの一致した意見だった。確かに、でか山の車輪は直径が2㍍もあり、道路に亀裂やおうとつがあっては運行もままならないだろう。今回、リーディングプロジェクトに祭りが掲げられたことで、来年開催に向けて巡行の市道・県道の修復が進むのではないだろうか。  

  一方、能登で一番勢いのある祭りとして知られるのが、能登町宇出津(うしつ)の「あばれ祭り」(7月5、6日)だ。この祭りは曳山巡行ではなく、地元でキリコと呼ぶ「切子灯籠(きりことうろう)」を大人たちが担いで巡行する。なので、道路に少々のおうとつがあっても足元に気をつければ動かすことは可能だ。「あばれ祭り」の開催について話し合う運営協議会が3月27日に開かれ、実施する方針を確認した。2日間にわたって40基のキリコが繰り出し、広場に集まって、松明(たいまつ)のまわりを勇壮に乱舞する=写真・下、日本遺産公式ホームページより=。神輿を川に投げ込んだり、火の中に放り込むなど、担ぎ手が思う存分に暴れる。祭りは暴れることで神が喜ぶという伝説がある。

  ただ、キリコの材料を作る製材所と、神輿を製作する工務店が地震で作業場や仕事道具が壊れたりしたため、地元の有志らがクラウドファンディングで復旧に必要な資金を募っている。また、祭りは志納(寄付金)によって賄われている。これまで祭りを支援してくれた人々の中には被災者もいることから、例年より寄付金が少なかった場合はキリコの本数を減らすなど内容の変更せざるを得なくなる。こうした点は、リーディングプロジェクトの予算でカバーしてほしいものだ。

  あばれ祭りは夏から秋にかけて能登各地で行われるキリコ祭りの先陣を切る代表的な祭りでもある。まさに、能登復興へのリーディングなキリコ祭りに期待したい。

⇒23日(木)午後・金沢の天気   はれ


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