自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

★能登地震「長く静かに始まり、向きや傾斜の異なる断層を次々と破壊」

2024年06月15日 | ⇒ドキュメント回廊

  元日の能登半島地震で港の海底が隆起して漁船が動けなくなっていた輪島漁港が早ければこの夏にも出漁できるようになるとの石川県農林水産部の見通しをメディア各社が伝えている(6月14日付)。「この夏」の具体的な日程は報じられていないが、現在片側通行となっている金沢と能登を結ぶ幹線道路「のと里山海道」を7月末までに全区間で対面通行ができるようになるとの見通しを国土交通省が発表しており、交通インフラの復旧の動きと連動した日程になるのではないか。

  話は変わる。今回の地震の特徴はなんだろう。メディア各社のインタビューで専門家や研究者は、半島の北東から南西にのびる150㌔の活断層がずれ動いたことを特徴の一つとして挙げている。1995年1月17日の阪神・淡路大震災を引き起こした活断層は50㌔ほどとこれまで言われているので、長さはその3倍にもなる。(※図はウエザーニュース公式ホームページより)

  また、発災以来よく聞いた言葉は「液状化現象」。能登の震源地から100㌔以上も離れ、金沢市に隣接している内灘町では道路がいたるところで隆起したり陥没した。同町の東側は河北潟に面していて、埋立地の地域では地面がゆがみ、多くの住宅や電柱が傾き、道路が15度ほど斜めになっているところも。現場では土砂が噴き上げた様子があちらこちらにあった。

  そして元日の地震以前から指摘されていたのが「流体」だ。去年5月5日に半島の尖端部分でマグニチュード6.5の地震があり、珠洲市では震度6強の揺れを観測した。翌日6日に国の地震調査委員会が臨時会合を開き、まとめた見解が「流体」だった。2020年12月から能登で活発化している一連の地震は、地下深くの流体が誘発しているとみられ、活動域は半島尖端の北側の海域に広がっていることが確認された、と。ただ、今回の地震では「流体」の言葉はあまり聞こえてこない。

  以下、ネットで見つけた京都大学での研究論文の概要。「2024 年 Mw 7.5 能登半島地震における複雑な断層ネットワークと前駆的群発地震によって制御される複合的な破壊成長過程」(研究者代表:奥脇亮・筑波大学生命環境系助教、深畑幸俊・京都大学防災研究所附属地震災害研究センター教授)。概要を引用する。世界中で観測された地震波形データを解析し、能登半島地震の破壊過程を推定した。その結果、この地震は複数の破壊エピソードから成ること、特に地震の発生から 10 秒ほど続いた初期破壊は、地震前に観測されていた活発な地殻活動域に重なっていたことが分かった。さらに、初期破壊後に進展した主破壊は初期破壊域を挟んで西と東に分かれ、それぞれ向きや傾斜の異なる断層を次々と破壊しながら大きく成長していった様子が明らかになった。

  上記のことを論文では簡潔な言葉で、「長く静かに始まり、向きや傾斜の異なる断層を次々と破壊した」と表現している。東西に150㌔にのびる活断層がずれ動いて、向きや傾斜の異なる断層が次々と破壊されていった。その過程で4㍍もの隆起や地盤沈下など大規模な地殻変動が起きた。能登半島地震の複雑なメカニズムを端的に言い表している。

⇒15日(土)夜・金沢の天気    はれ

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする