自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

★「花と生き物たちの楽園」小原古邨の世界

2021年04月25日 | ⇒トピック往来

    そこに描かれていた作品の数々はまるで「花と生き物たちの楽園」だった。作者は小原古邨(おはら・こそん、1877-1945)、明治末から昭和にかけて活躍した花鳥画の絵師だ。金沢出身で、初の「里帰り」展がきのう24日、金沢市の石川県立歴史博物館で開幕した。実は自身もこれまで名前すら知らなかった。きょう鑑賞に出かけた。

   作品を鑑賞して、動物たちの表情が印象的だった。展覧会のチラシにもなっている「蓮に雀」=写真・上=は、ハスの花が開き始める様子を、茎に舞い降りたスズメがじっと観察している様子が描かれている。ハスの花の線やスズメの毛並みまで実に細やかだ。

   会場で鑑賞者が多く足を止めていたのが「踊る狐」だった=写真・中=。ハスの葉を被って、まるで踊っているように面白く描いた作品だ。この作品を眺めていて国宝の「鳥獣戯画」のワンシーンを連想した。生き物たちのユートピアだ。緊張感のある絵もある。「金魚鉢に猫」=写真・下=は、鉢の中の金魚をじっと見つめて狙っている。このネコの姿は現代も変わらない。こうした鳥や動物、花といった身近な自然を木版画で写実している。

   いわゆる江戸時代の浮世絵と同じようには見えない。伝統的で高度な浮世絵の技術をベースにまるで水彩画のように美しい色合いで表現することで、明治、大正、昭和と生き抜いた画家だったのだろう。大正末期からは「祥邨」の号を用い、華やかな色とモダンな画面構成の作品はアメリカやポーランドなど欧米で展示されるようになった(チラシ文より)。

   「お帰りなさい。楽しませてくれてありがとう」と言いたい。県立歴史博物館の「小原古邨 海をこえた花鳥の世界」展では版画を中心に200点が展示されている。6月27日まで。(※写真の中と下は会場で販売されている絵葉書より)

⇒25日(日)夕・金沢の天気     くもり


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