自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

★オリンピック「いじり」

2021年03月18日 | ⇒メディア時評

   テレビ業界では「いじる」「いじり」という言葉がある。タレントが少々意地悪な目線で、同じタレントや素人を相手にちょっと痛いところを突くことで笑いを取る。もちろん、「いじる」側は「いじり」と「いじめ」のボーダーラインを心得ている。最初に相手を褒めたたえて、「ところで」と突っ込んでいく。視聴者側にとってはその言葉の展開が面白い。

   これもテレビ的な「いじり」の発想だったのかもしれない。以下、NHKニュースWeb版(3月18日付)から。東京オリンピック・パラリンピックの開閉会式の統括責任者を務める佐々木宏クリエーティブディレクターが、去年3月、大会の演出チームのSNS上のやり取りで、女性タレントの渡辺直美さんの容姿を侮辱するような豚に見立てた演出案を提案し、メンバーの反対で撤回していたことを明らかになった。

   大会組織委員会の橋本会長は18日正午すぎから記者会見し、本人から事実関係の説明を受けたとしたうえで「容姿を侮辱するような発言は大変、不適切。絶対にあってはならない」と述べ、本人からの辞意を了承し、佐々木氏が辞任したことを明らかにした。佐々木氏は18日、報道各社に対し「私のアイデアおよび発言内容に非常に不適切な表現がありました。大変な侮辱となる私の発案、発言は取り返しのつかないことで心から反省し、おわび申し上げます」との謝罪文を出した。

   佐々木氏はサントリー缶コーヒー「BOSS」などのCMで知られる電通出身のクリエーター。2016年リオデジャネイロ五輪の閉会式では、当時の安倍総理が「スーパーマリオブラザーズ」のキャラクターに扮して登場する演出で世界を沸かせた(同)。発想がもともとテレビ的なのだ。

   渡辺直美氏が所属する吉本興業の公式ホームページでは、本人のコメントが発表されている。

「オリンピックの件ですが、去年、会社を通じて内々に開会式への出演依頼をいただいておりましたが、コロナの影響で オリンピックも延期となり、依頼も一度白紙になったと聞いておりました。それ以降は何も知らされておらず、最初に聞いていた演出とは違うこの様な報道を受けて、私自身正直驚いております。

表に出る立場の渡辺直美として、体が大きいと言われる事も事実ですし、見た目を揶揄されることも重々理解した上でお仕事をさせていただいております。

実際、私自身はこの体型で幸せです。なので今まで通り、太っている事だけにこだわらず『渡辺直美』として表現していきたい所存でございます。しかし、ひとりの人間として思うのは、それぞれの個性や考え方を尊重し、認め合える、楽しく豊かな世界になれる事を心より願っております。

私自身まだまだ未熟な部分もありますので、周りの方にご指導いただきながら、これからも皆様に、楽しんでいただけるエンターテイメントを作っていけるよう精進して参りたいと思います。」

   上記の本人コメントは英語と中国語でも発表されている。おそらく吉本興業とすれば、本人がネットフリックスの「Queer Eye: We're In Japan!」やCMなどで国外でも人気があり、東京オリ・パラ関連という国際ニュースを意識してあえて翻訳文も掲載したのだろう。しかもスピード感を持って対応していることに、ある意味で感じ入る。佐々木氏が辞任したので、いっそうのこと東京オリ・パラの閉会・開会の総合演出を吉本興業に委ねるのも一案ではないかと、ふと思った。

⇒18日(木)夜・金沢の天気      はれ


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