自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

★ソフトバンク「次の一手」を読む

2006年03月19日 | ⇒メディア時評

 この1週間で2度も「IT花火」が打ち上がった。3月16日に有線放送や無料インターネット動画配信サイト「GyaO(ギャオ)」を運営するUSENがライブドアと資本・業務提携すると発表し、翌17日にはソフトバンクが携帯電話3位のボーダフォン日本法人を1.7兆円で買収すると正式に表明した。私はGyaOの動画ニュースを時折り閲覧しているし、携帯電話のキャリア(通信事業者)はボーダフォンなのでこの2つのニュースに関心があり、けさのテレビ朝日の討論番組「サンデープロジェクト」にも見入った。

  記者会見を通じて、ソフトバンクとUSENどちらの戦略が鮮明に伝わってきたかというとソフトバンクの方だ。サンデープロジェクによると、今回の買収劇ではボーダフォン日本法人のウィリアム・ティー・モロー代表の方が焦っていたようだ。今年11月のナンバーポタビリティー制度(番号を変えずに通信事業者を変更)でボーダフォンが草刈り場となることに危機感を持って、有識者と次々会って意見を求めていたようだ。このタイミングでソフトバンクの孫正義社長が動いた。「チャンスだ」と。

  ソフトバンクは去年11月、携帯電話事業への参入認可を取っている。「チャンスだ」と判断したのは、新規参入でゼロから顧客を獲得するより、1500万人余りの既存顧客を獲得したかったのだろう。何しろ、ソフトバンクはロスを垂れ流しながら顧客を増やしてゆく手法を取り、ADSLのユーザーを開拓した。その間、「押し付けだ」などとマスコミに随分叩かれもした。

  で、ソフトバンクの見えてきた戦略とは何か。それは、「通信のオールインワンサービス化」であることは間違いない。自らで育てたADSL事業に加え、日本テレコム買収(2004年)によって入手した光ネットワークインフラ、そして携帯電話事業。これらをひとまとめにして定額でいくら、といったビジネス展開だろう。携帯電話の料金は高い(1人平均8000円)と多くのユーザーが思っている。そこで、「光と携帯で5000円」といった定額制にする、あるいは携帯だけでも「使い放題3000円」などとキャンペーンを張れば、草刈り場になるどころか、顧客を増やすことができるのではないか。

  ソフトバンクのボーダフォン買収戦略でむしろ岐路に立たされるのはNTTかもしれない。NTT東西地域会社は06年度の事業計画で光ファイバーの販売を強化し、これまでの1.7倍にあたる617万回線、中期経営戦略では2010年までに3000万回線を販売するとしている。つまり、いまある銅線をすべて光に置き換えることで、ソフトバンクをADSL事業から追い落とす一石二鳥の効果を狙っているのは見え見えだ。

  しかし、逆にNTTに「通信のオールインワンサービス化」ができるかどうか。できなければソフトバンクから逆襲される。この両者のツバ競り合いがある限り、少なくともボーダフォンのユーザーは11月になっても動けないのではないか。ソフトバンクの新しいサービスに期待し、その内容を見極めたいからだ。

 ⇒19日(日)午後・金沢の天気  くもり


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