ヌルボ・イルボ    韓国文化の海へ

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横須賀の老舗古書店・港文堂で、韓国関係の本をさがす

2013-05-10 23:58:08 | 韓国・朝鮮に関係のある本
 昨日は暑くもなく寒くもない心地よい日和の上、ヒマな1日だったので、久しぶりにスクーター(原付)で遠乗り。横浜→横須賀の約30㎞、法定速度内で1時間ちょっと。10年ほど前に和歌山→横浜を丸2日で走破(笑)したことを思えば、なんてことないです。海とか新緑の山とかを眺めながらタラタラ走行していると、以前読んだ漫画・芦奈野ひとし『ヨコハマ買い出し紀行』に描かれた風景が思い起こされます。

 で、目的地は横須賀のどこかというと、安浦町。最寄駅が京浜安浦駅から県立大学駅に改称してからもう9年になります。「安浦に行く」などと言うとニヤリと笑うような御仁はどんどん減りつつあるのでしょう、たぶん。

 私ヌルボの行先は、老舗古書店の港文堂。品揃え(量&質)では県下でもトップクラスだと思います。ところが、80年頃に逗子から藤沢、さらに横浜へと引越しして、ほとんど行く機会がありませんでした。ということで、もしかしたら30年ぶりくらいかも・・・。
 他の多くの商店街同様、米が浜通りも寂しくなっていたし、港文堂も外見は年数分老朽化した感は否めませんでしたが、中へ入ってみると充実度は変わりなく、ほっとしました。

      
      【店内は、古書愛好家の目を引きそうな本がいっぱい!】

 おもしろそうな本をあれもこれも買っていてはきりがないので、しばらく前から韓国・朝鮮関係の本と、戦時下の詩歌集、それも入手しにくく、かつ安価なものに絞って購入することにしています。
で、今回の収穫は、以下の3冊。

        
   【表紙の写真は「ミス・京城の微笑」とあります。一瞬高峰秀子かと思いました。】

 積まれていた昔の雑誌の山からたまたま発見。昭和26年9月発行の「毎日情報 9月号」です。毎日新聞社がこういう雑誌を発行していたんですね。朝鮮戦争勃発の1年3ヵ月後です。作家・張赫宙(ちょう・かくちゅう)が空路釜山に行った際の現地報告を15ページにわたり冒頭に掲載しているのでぜひ読んでみようと思った次第。
 張赫宙は、この翌年の1952年に朝鮮戦争を描いた小説「嗚呼朝鮮」を書きました。これは私ヌルボ、数年前に読みました。その後、彼は野口赫宙の名で書くようになります。

         
   【30年以上前の本にしては、紙がやや黄ばんでいるものの、キレイ。】

 許集(編・訳)「韓国発禁詩集」(二月社)は、1978年10月発行。古書としてさほどめずらしい本ではなく、市立図書館等にもありますが、許集というよくわからない編者の22ページに及ぶあとがきも含め、きちんと読み直してみようと思いました。

         
   【[現地篇]と[銃後篇]合わせて約800首の短歌を収めています。】

 実は私ヌルボ、このブログを立ち上げた時、<戦時下の短歌・俳句・詩>についてのブログも同時に始めるつねりでした。しかしこの<韓国文化の海へ>だけで手いっぱいになってしまい、今に至っています。
 戦時中、多くの無名の兵士たちが、前線で数多くの俳句、短歌や詩を作り、書き残していることは、世界の短詩文学史上稀有のことだと思います。「銃後」の人々の作品についても同様。
 ところが、戦後は当時の文学作品は総じて戦争賛美とみなされたりして文学史のテキストでも無視されてきました。しかし、中には著名な歌人・俳人・詩人たちの作品より心をうつ作品が数多く埋もれています。
 このことについて書くと長いので、ここでは出征する夫との別れを詠んだ女性の歌1首だけ紹介しておきます。

  みかへりてしばし動かぬ夫(つま)はもよ天地も消えよ此の須臾(しゅゆ)の間に  
          沼上千鶴子(1941年5月刊「戦線の夫を想ふ歌」より)


 さて、上記の「支那事変歌集」(三省堂版.1938年)について。「支那事変歌集」には、別にアララギ編の岩波書店版もありますが、この三省堂版は昭和13年4月、読売新聞社の依頼を受けて齋藤茂吉と佐佐木信綱が隔月で選んだものです。[現地篇]166首と[銃後篇]636首が収められています。
 この機会に、朝鮮からの投稿歌を拾ってみました。全部で11首ありました。その中で、「朝鮮」ということに意味のありそうなものをあげてみます。

  朝鮮の民等聲あげ兵を送る見て佇(た)つ吾の心迫りぬ   
          京城府  安蘇潔

  鼕々(とうとう)と太鼓が鳴れば鮮人らも出征兵士送ると集ひ來
          朝鮮全州府  芦田定藏

  鮮童の手に手に振れる日のみ旗ますらをの心つよくうつらし
          安東  樽井壽々代


 ・・・たまたま数日前に読んだ金聖珉「緑旗聯盟」の最後も、主人公の陸士出の朝鮮人青年が京城駅から万歳三唱とともに出征していく場面でした。
 ただ、その登場人物の置かれていた状況は複雑なものがあります。日本人兵士の出征についても各々いろんな物語があったでしょうが、この3首は表面的な写生にとどまっているのが残念。「鮮人」のようすを心強く共感をもって受けとめているようではあります。

  輝ける戦果のニュースに感激の作業をつづく夜の工場に 
          朝鮮咸鏡南道  白岩三男


 ・・・咸鏡南道の工場といえば、興南の朝鮮窒素肥料株式会社が思い浮かびます。→コチラの記事であらましを知ることができます。また→コチラには、さらに詳しい連載記事があります。

     小學校にて 
  握り来て手の汗つける一錢を獻金すとて出だせる鮮童
          朝鮮忠清南道  高尾九州男


 ・・・上記の「緑旗聯盟」には、資産家である主人公の父や伯父の巨額の献金が新聞記事にもなったということが書かれていました。(「鮮童」という言葉、短歌の世界ではそんなにふつうに使われていたのかな?)

 朝鮮には関係ないのですが、地元関係ということで目にとまったのが次の1首。
 
  秋の海浪おだしくてヒトラーユーゲント三笠艦上に萬歳を唱ふ 
          横須賀市 青野針太郎


 あら、そんなことがあったのか、と調べてみたら、たしかにありました。
 1938年(昭和13年)9月23日午前11時ヒットラーユーゲントが記念艦三笠を訪問したとのことで、その時の記念写真&説明を→コチラで見ることができます。

 いろんな本に、いろんな人たちの物語がぎっしりつまっています。
 「支那事変歌集」からは75年、朝鮮戦争勃発からは63年。「韓国発禁詩集」発行からも、もう35年経つのですね。
 時を隔てて見ると、リアルタイムでは見えなかったであろうことがいろいろ見えてきて、それが古書を読む楽しさのひとつです。

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