1週間前、<韓国の「今」の作家たち>と題した記事で「毎日新聞」に連載中の「新世紀 世界文学ナビ 韓国編」について紹介しました。
その中で私ヌルボ、「韓国で評価が確立し、今も活躍している作家をもっと紹介してくれなくっちゃ・・・。李文烈(イ・ムニョル)とか申京淑(シン・キョンスク)とか・・・」と注文をつけておきました。
で、今朝「毎日新聞」を開くと「韓国編」はまだ続いていて、取り上げている作家がまさに申京淑ではないですか! 記事の内容は→コチラ。
ナビゲーターのきむふなさん、このブログを読んでくれたようです。ま、そんなこたあないか。
連載の最初でなく、4回目の今日申京淑を取り上げたのはどこまで計算していたのかな、とヌルボは考えました。というのも、ごく最近彼女の超ベストセラー「オンマをお願い」の英語版「Please Look After Mom」がアメリカで刊行され注目されるとともに、ベストセラーの上位にも入っているということが、韓国の各メディアで大きく伝えられているからです。
で、この「毎日」の連載に今日載ってなくても本ブログに書くつもりだったんですよ、じつは。
※中でも詳しいニュース(日本語版)は→コチラ。
※「ニューヨークタイムズ」の記事は→コチラ(英文)。
※4月28日付のニューヨークタイムズ電子版によると、Hardcover Fiction部門で14位。
※アメリカのAmazonでは、現在30のレビュー中22が★5つ。1
それら韓国発のニュースを見ると、「オンマをお願い」のアメリカでの出版社が村上春樹の本を出しているクノップ社。その取締役は「(170万部売れた)韓国に負けないくらい米国の読者もこの本を愛すると確信し、初版を10万部に決めた」とか、「春樹より初版部数は多い」とか、相当に興奮気味のようです。一般読者も再注目で、YES24等の書籍通販のサイトではまたベストセラー1位になってます。
※韓国文学翻訳院の支援により米国で出版された韓国文学で、最も大量の初版部数を記録したのは、2006年発売の高銀(コ・ウン)の詩歌集「南と北」の5000部。国庫の支援を受けず民間で出版された本では、2010年9月やはりクノップ社から発売されたキム・ヨンハの小説「光の帝国」の6000部とのことです。
【表紙は原作本(右)とは全然違います。意図的に東洋人らしい写真を用いたのでしょう。】
「オンマをお願い」は2008年11月刊行以後、韓国に<オンマ・シンドローム>を巻き起こした小説ですが、なにをかくそう私ヌルボ、2009年8月11日のこのブログの記念すべき(?)1回目の記事で<韓国の大ベストセラー 申京淑「オンマをお願い」、翻訳本刊行を期待!>と題して紹介してたんですねー。
実際、なんと世界24ヵ国で翻訳出版されるということになり、けっこうなことですが、「毎日新聞」の記事によると、「母をお願い」(←記事ではこう表記)は日本では集英社から発売されるのが今年の9月だとか。おそらく、訳者の安宇植先生が昨年12月に亡くなったという事情もあって遅くなったのかも・・・。
※「母をお願い」だと、「オンマ」という語に込められた子→母の情が感じられないので、ヌルボとしては納得できません。かといって「お母ちゃん」というのも今は死語となりつつあるし、「ママ」は西洋っぽいし・・・。安宇植先生は「離れ部屋」で「オムマ」としていましたが・・・。まあ、「オンマ」か「お母さん」ですかねー。
このようにいろいろとニュースになっているのを機会に、多くの人が申京淑や韓国の文学に対して、もっと関心をもつことを期待したい、というのがヌルボの願いです。
※申京淑の小説の特徴や、文学史的な位置について、わかりやすく書かれている記事がありました。(日本語)→<KOREANA>のサイト中の「小説家 申京淑 希望と疎通を語る彼女特有の方法」。筆者は「ハンギョレ」の文芸担当の記者、かな?
※申京淑の小説を未読の方にぜひお薦めは、「毎日」の記事にもあった「離れ部屋」。数年前読んでとても感動しました。(←単純すぎる感想で恥ずかしい。) →ヌルボが愛読しているブログ<晴読雨読ときどき韓国語>を参照のこと。
※申京淑の昨年のベストセラー「どこからか私をよぶ電話が鳴って」の紹介記事は→コチラ。
さて、「毎日新聞」の「新世紀 世界文学ナビ 韓国編」が来週も続くとすると、今度は本命=孔枝泳でしょう。対抗は、うーむ、「妻が結婚した」のパク・ヒョヌクあたりかなー。それからウン・ヒギョン・・・(?)。
[追記] 「毎日」の記事の<作家本人から>の文中、「中沢けいさん、島田雅彦さん、平野啓一郎さんのような作家と会い、彼らの作品を読んだことは大きな喜びだ。韓国で無作為に紹介されている日本の小説とは一味違う本格的な文学作品に接し、その多様な世界に強い印象を受けた」とあります。この韓国で無作為に紹介されている日本の小説とは、近年韓国のベストセラー上位に常にランクされている、奥田英朗等のエイタテインメント系の小説をさしています。「どこからか私をよぶ電話が鳴って」の執筆動機についても同様のことを語っていました。真摯な純文学を旨とする彼女らしいところです。
その中で私ヌルボ、「韓国で評価が確立し、今も活躍している作家をもっと紹介してくれなくっちゃ・・・。李文烈(イ・ムニョル)とか申京淑(シン・キョンスク)とか・・・」と注文をつけておきました。
で、今朝「毎日新聞」を開くと「韓国編」はまだ続いていて、取り上げている作家がまさに申京淑ではないですか! 記事の内容は→コチラ。
ナビゲーターのきむふなさん、このブログを読んでくれたようです。ま、そんなこたあないか。
連載の最初でなく、4回目の今日申京淑を取り上げたのはどこまで計算していたのかな、とヌルボは考えました。というのも、ごく最近彼女の超ベストセラー「オンマをお願い」の英語版「Please Look After Mom」がアメリカで刊行され注目されるとともに、ベストセラーの上位にも入っているということが、韓国の各メディアで大きく伝えられているからです。
で、この「毎日」の連載に今日載ってなくても本ブログに書くつもりだったんですよ、じつは。
※中でも詳しいニュース(日本語版)は→コチラ。
※「ニューヨークタイムズ」の記事は→コチラ(英文)。
※4月28日付のニューヨークタイムズ電子版によると、Hardcover Fiction部門で14位。
※アメリカのAmazonでは、現在30のレビュー中22が★5つ。1
それら韓国発のニュースを見ると、「オンマをお願い」のアメリカでの出版社が村上春樹の本を出しているクノップ社。その取締役は「(170万部売れた)韓国に負けないくらい米国の読者もこの本を愛すると確信し、初版を10万部に決めた」とか、「春樹より初版部数は多い」とか、相当に興奮気味のようです。一般読者も再注目で、YES24等の書籍通販のサイトではまたベストセラー1位になってます。
※韓国文学翻訳院の支援により米国で出版された韓国文学で、最も大量の初版部数を記録したのは、2006年発売の高銀(コ・ウン)の詩歌集「南と北」の5000部。国庫の支援を受けず民間で出版された本では、2010年9月やはりクノップ社から発売されたキム・ヨンハの小説「光の帝国」の6000部とのことです。
【表紙は原作本(右)とは全然違います。意図的に東洋人らしい写真を用いたのでしょう。】
「オンマをお願い」は2008年11月刊行以後、韓国に<オンマ・シンドローム>を巻き起こした小説ですが、なにをかくそう私ヌルボ、2009年8月11日のこのブログの記念すべき(?)1回目の記事で<韓国の大ベストセラー 申京淑「オンマをお願い」、翻訳本刊行を期待!>と題して紹介してたんですねー。
実際、なんと世界24ヵ国で翻訳出版されるということになり、けっこうなことですが、「毎日新聞」の記事によると、「母をお願い」(←記事ではこう表記)は日本では集英社から発売されるのが今年の9月だとか。おそらく、訳者の安宇植先生が昨年12月に亡くなったという事情もあって遅くなったのかも・・・。
※「母をお願い」だと、「オンマ」という語に込められた子→母の情が感じられないので、ヌルボとしては納得できません。かといって「お母ちゃん」というのも今は死語となりつつあるし、「ママ」は西洋っぽいし・・・。安宇植先生は「離れ部屋」で「オムマ」としていましたが・・・。まあ、「オンマ」か「お母さん」ですかねー。
このようにいろいろとニュースになっているのを機会に、多くの人が申京淑や韓国の文学に対して、もっと関心をもつことを期待したい、というのがヌルボの願いです。
※申京淑の小説の特徴や、文学史的な位置について、わかりやすく書かれている記事がありました。(日本語)→<KOREANA>のサイト中の「小説家 申京淑 希望と疎通を語る彼女特有の方法」。筆者は「ハンギョレ」の文芸担当の記者、かな?
※申京淑の小説を未読の方にぜひお薦めは、「毎日」の記事にもあった「離れ部屋」。数年前読んでとても感動しました。(←単純すぎる感想で恥ずかしい。) →ヌルボが愛読しているブログ<晴読雨読ときどき韓国語>を参照のこと。
※申京淑の昨年のベストセラー「どこからか私をよぶ電話が鳴って」の紹介記事は→コチラ。
さて、「毎日新聞」の「新世紀 世界文学ナビ 韓国編」が来週も続くとすると、今度は本命=孔枝泳でしょう。対抗は、うーむ、「妻が結婚した」のパク・ヒョヌクあたりかなー。それからウン・ヒギョン・・・(?)。
[追記] 「毎日」の記事の<作家本人から>の文中、「中沢けいさん、島田雅彦さん、平野啓一郎さんのような作家と会い、彼らの作品を読んだことは大きな喜びだ。韓国で無作為に紹介されている日本の小説とは一味違う本格的な文学作品に接し、その多様な世界に強い印象を受けた」とあります。この韓国で無作為に紹介されている日本の小説とは、近年韓国のベストセラー上位に常にランクされている、奥田英朗等のエイタテインメント系の小説をさしています。「どこからか私をよぶ電話が鳴って」の執筆動機についても同様のことを語っていました。真摯な純文学を旨とする彼女らしいところです。
「新世紀 世界文学ナビ 韓国編」で紹介されている作家を読んでみよう!と思い、金愛爛さんにしました。
それにしても韓国の作家って、女性が多くないですか?
私が知らないだけかもしれませんが、目につく作家はみな女性。
なにか理由があるのでしょうか?
もし男性作家で有名な作家がいたら教えて下さい。
「今活躍中」の韓国の「純文学」作家&作品については、翻訳家のよしはらいくこさんのブログ「韓国ブックカフェ」とか、新潟大の波田野節子先生が運営されてる「新潟で韓国と北朝鮮の現代小説を読む会などが参考になると思います。
それから、
・・・と、ここまで書いて考えると、先が長くなりそうなので、今日か明日にでも「韓国書(小説)のアタリのつけ方」について記事にしますね。
1990代以降、とくに女性作家が目立つようになったのは、「政治の時代」が終わって、日常の、繊細な心の描写に重点が置かれるようになったからではないでしょうか?
※男性で、私が読んでみようかな、と思っている作家は成碩済です。いろんな作家の短編集「いま、私たちの隣に誰がいるのか」の中で、申京淑の作品とともに印象に残っているのと、関連記事をいくつか読んで興味を持ったので・・・。
※紹介したサイトや本等については、お手数ですが検索して見てみてください。
表紙は、全く「売上」のための戦略の鍵なので、普通はもっとアジア風味で晒しつけるのが普通ですが、これはまだ抑制された程度で、良かったかと思います。原作のデザインとは無論似ても似つかないものですが。
私もとうとう図書館本を手に入れて数日前から急いで読んでいます。ここまでの感想は、たとえば英語圏に紹介されて定着した最近のアジア文学とは同じことを取り扱いつつ全く異なるということが大きいかな。誰かが消える、という現象からとてつもない話を引き伸ばして書いて「超常現象文学」(凄いズレですが)をアジアの専売特許にして流行ったのが村上春樹や吉本はななといった作家だとして、これらの作家ははアジアイコール全体主義とその犠牲となる庶民、や、その経済的困窮、という時代錯誤紋切り型先入観を払拭するのに役に立ったらしいですが。それでも、英語で書くコリアンアメリカン文学を読んだ身には、内容的には特に違和感はないです。翻訳もかなり口語調でなかなか自然にきまっているんですが、翻訳者のキムチヨン氏は、著名な翻訳者の子供ということで、この二世翻訳家もキョッポ社会で話題になっています。
私はもしかしたら辞書をもっと早く引けるようになったら、チョンウンニョンの「生姜」という最新の小説が読みたいです。奥田英朗は、実は韓国から来た知人が読んでいて、その本を読み終わってから貰いました。でも、二三ページ読んで、自分の語彙の無さに閉口。韓国では凄い人気らしく、その知人は「全部読んだ」と言っていたことを思い出しました。
アメリカの状況をいろいろ伝えてくださってありがとうございました。
レイシズムが明らかな批評が出ているとの報道は私も読みました。困ったことですが、そんなごく一部のレイシストに対してキョッポ(僑胞)の人たちもあまりナーバスにならない方がいいと思います。小説はやはり小説自体のもつ力で評価が定まってくるでしょう。
表紙は、たしかに「抑制されたアジア風味」ですね。少なくとも、このような小説を読もうとする読者層はかなり紋切型先入観から自由になっているということでしょうか。
「オンマをお願い」は、村上春樹のような日本の伝統から離れた無国籍的な都会派小説とは違って、まさに韓国の都会と農村、伝統と現代が混濁している状況での人々の心を描写してもので、そこがどうアメリカの読者に理解されるのか、興味深いです。
チョン・ウンニョンの「生姜」は知りませんでした。3月に出たばかりの小説なんですね。YES24のサイトに作者インタビューの動画がありました。→
http://www.yes24.com/24/goods/4776388
奥田英朗は現代の日本社会の問題を少し誇張して(?)モチーフにして、読んでおもしろい小説をたくさん書いてますね。私も何冊も読みました。「イン・ザ・プール」や「空中ブランコ」、「邪魔」などはホントにおもしろかったです。純文学というよりエンタテインメントですね。