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ヌルボ・イルボ    韓国文化の海へ

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朝鮮総督府発行「朝鮮旅行案内」中の朝鮮語会話は、「上から目線」

2012-07-13 23:28:26 | 韓国・朝鮮に関係のある本
 一応1つ前の記事の続きです。

 横浜市立図書館の蔵書に戦前の朝鮮旅行案内記があることを知り、借りて目を通してみました。1934年9月、朝鮮総督府鉄道局発行です。
  
        
         【年季が入っていて傷みが激しく、館内閲覧限定もやむをえません。】

 内容は、と見ると、携帯の便をはかってか小さい判型ながら、一般記事の他にも地図・写真・挿絵・カコミ記事等々盛りだくさん。

       
       【このページは、釜山の名所の説明に「ゴム沓(くつ)」の囲み記事。地図が付いています。】

 私ヌルボが興味をもった点は、朝鮮の風俗や文化を紹介した小さなカコミ記事が随所に入っていること。上の写真にもゴム沓(コムシン)の説明がありますが、別の2例を下に掲げます。

     
 
 この記事によると、すでにこの頃から明太子については「頗る内地人の嗜好に適する」と記されてるのですね。「少なくとも左党と、朝鮮に於ける生活に経験を持って居る内地人には・・・」と但し書きつきですが・・・。学童の弁当箱に「必ずと云ふ程」に一塊というのは本当なのかなー?

     

 今は頭上に物を載せて運ぶ女性を見る機会は激減しました。しかしないわけではありません。下の写真は昨年(2011年)9月光州市内で撮ったものです。

         

 頭の上にバッグを載っけて信号待ちをしていた女性(左)、横断歩道を渡ってそのまま歩いて行きました。(右)

 さて、「朝鮮旅行案内記」でもう1つ興味をもったのが、簡単な朝鮮語の文と単語を紹介したページ。今の韓国旅行ガイドブックにもふつうありますね。
 しかし、下を見てください。

   

 「ありがたう」とあります。「ございます」がついてないですね。で、朝鮮語も「コーマプソ」。「コマプスムニダ」じゃないです。そして「行け」が「カ」。「ありません(オプソヨ)」ではなく「ない(オプソ)」。パンマル(ぞんざい語)になってます
 なんなんだ、この「上から目線」は? つまりは、当時の日本人が朝鮮に行った時には、「そういう言葉」を使っていたということなんですねー。会話の例文からして対等な関係が前提となっていなかった。そしてそのことにこうした本を作った人も、これを利用した人も何とも疑問を感じなかった、ということでしょうか・・・。
 その次のページの一部を続けて見てるとさらに問題が・・・。

     

 今韓国語を学習中の皆さんは上のカタカナを見て、元の韓国語がわかるでしょうか?
 チョンガ(총각)は「男児」じゃなくて男の独身者でしょう。「女児」の「キチベエ」はなんで吉兵衛?じゃなくて「계집애(ケーチベ)」ですね。「女児」より少し上じゃないですか? 「芸妓」すなわち「妓生(기생)」は、キーセンではなくキーサンというのが一般的だったのかな? 他の本等でも見ましたが・・・。
 しばし考えたのが「女」の「エベンネエ」。「男」の「사내(サネ)」はすぐわかるのですが・・・。結局思いついたのが「예쁜애(이쁜애)」でした。「イェップネ」。しかし、「女」じゃなくて「かわいい娘(こ)」という感じなだけどなー。どうもこういう言葉の関係づけもちょっと引っかかるなー。
 そして何よりも「カルボ(갈보)」なんて単語、今の韓国語旅行会話の本にはもちろん載ってるわけないですね。こういう単語が載っていること自体、当時朝鮮旅行に出かけた日本人(男性)のお里が知れるというものです。あーあ。


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16 コメント(10/1 コメント投稿終了予定)

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ガイドブック (前川健一)
2012-07-14 00:16:55
 この本が某図書館にもあることを知り、しかし、借りに行くのは面倒で、もし古本屋にあったら、どのくらいの値段をつけているのだろうかと調べていたら、Google bookで全頁読めることを発見(慶応大学図書館所蔵の本)。全体にざっと目を通すだけでも時間がかかるので、食事関連の文章を精読し、あとは適当に目を通しました。表現が客観的で、「こんなものは、日本人の口には合わない」などといった記述は一切ないですね。「歴史」部分の文章は目を通していませんが、執筆者は朝鮮が好きだったことはわかりますね。違います?
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Google bookにあったとは! (ヌルボ)
2012-07-14 06:31:07
Google bookで読めるとは知りませんでした。
さっそく探してみたら、たしかに!
役立つ情報をありがとうございました。

私自身もおもしろそうなところを拾い読みした程度ですが、やはり好きだからこそ書ける、と感じられる記述がいろいろありました。
筆者自身の旺盛な好奇心があるからこそ、読者も楽しく読めるわけだし・・・。

ただ、どういう事柄について、どのように興味を持っていたかについては、当時の時代性が反映しているのではと推定しているのですが・・・。
たとえば、現代日本人の朝鮮好きがタイムスリップして当時の朝鮮に行ったとしたら、着眼点が少し違うのでは、ということです。

挿絵なんかも細かく見るとおもしろそうです。
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Unknown (yohnishi)
2012-07-14 21:54:37
女の「エペンネエ」はおそらく여편네(嬶あ)ではないかと。

 ちなみに女児の「キチベエ」も面白いですね。仰るとおり「계집애(ケーチベ)」のことだと思いますが、この単語現代の韓国映画やドラマを見ても、ほとんど綴り通りに発音されているのを聞いたことがありません。明らかに「기집애」と発音されています。

 「キチベエ」とあることは、当時から「기집애」と発音されていたことが分かりますが、逆に辞書がなぜ未だに계집애と載せているのかが、以前から謎に思っている点です。
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Unknown (yohnishi)
2012-07-14 22:00:12
すみません。ハングルだと文字化けするようです。
「エペンネエ」→「ヨッピョンネ(嬶あ)」
「キチベエ/ケーチベ」→「キーチベ」

です。
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好奇心 (前川健一)
2012-07-14 22:13:08
 戦前の旅行記や滞在記を読んでいると、驚くような好奇心に出会うことがあります。「枕を調べてやろう」とか「雑貨屋の商品を点検する」といった調べ魔とメモ魔がすくなからずいます。例えば、『東印度の土俗』(三吉朋十、1943)や、『南洋の生活記録』(岡野繁蔵、1942)など、南洋や大東亜がブームになる時代に、すこぶるおもしろい本が出ています。やはりこの時代に出た『馬来語大辞典』(旺文社)ほどの大辞典は、現在でもありません。辞典ですが、事典のような記述もあります。腰布やコーヒーに数千字の解説をつけています。
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なるほど・・・ (ヌルボ)
2012-07-15 00:50:10
yohnishiさん、ご指摘ありがとうございます。エペンネエは、たしかに「ヨッピョンネ」ですね。語彙力不足で、思いつきませんでした。エッペンネという発音はもしかして釜山なまりでしょうか?

幕末の英会話本でwater→「わら」、red→「うれ」とあるように、かつての一般向き朝鮮語会話も文字からではなく耳で聞いてカタカナ書きにしたのでしょうかねー?
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好奇心の源泉 (ヌルボ)
2012-07-15 01:05:43
前川さんへ。
ここに挙げられた東南アジア関係の本は全然知りませんでした。
いくら時代が時代とはいえ、国策だけではそのようなおもしろい本は書けないでしょうね。それを「純粋な好奇心」という言葉で括ってよいものかどうか。

しかし、それら現地社会の生活・文化に対する探究心といったものは占領下の軍政のありようとはどう関係していたのでしょうか・・・。
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好奇心 (前川健一)
2012-07-15 07:54:54
 上記紹介したアジア書が出版された1940年代は「時代が時代」ではありますが、異文化に対する好奇心と「この時代」は直接関係がないように思います。と言いますのは、幕末の欧米方面の使節団の記録(『福翁自伝』なども含めて)を読みますと、さまざまなことに好奇心が発揮されていることがわかります。
 もちろん、出版事情という点では、軍政下という「時代」が背景にあります。いい辞書の出版は、軍部の要請もあったでしょう。しかし、著者の好奇心は、それと連動しているような気がしないのです。
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re: なるほど・・・ (yohnishi)
2012-07-15 22:31:45
>耳で聞いてカタカナ書きにしたのでしょうかねー?

おそらくそうでしょうね。ただ「ヨッピョンネ」なんていう卑語が紹介されているところを見ると、上から目線というよりは、単にそもそも取材対象が上流階層ではなかったためで、筆者は丁寧なんだかぞんざいなんだか分からずに紹介しているのでは、という気がします。

ひょっとして置屋で取材しているのかも知れませんが...
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朝鮮語への関心 (ヌルボ)
2012-07-15 23:58:43
植民地時代の朝鮮で生活していた日本人の書いた本を読んで、朝鮮語に対する関心のなさに首を傾げたことがしばしばありました。長年住んでいても、なぜ初級レベルも離せないのか、と。
日本人街に居住し、子供も日本人がほとんどの学校に通っていれば日本語だけで済むし、わざわざ朝鮮語を覚える必要性がなっただろうにせよ・・・。
「置屋で取材」とはおもしろいですね。むしろ妓生や娼婦を相手にしている男の方が朝鮮語を教わったりしてたりして・・・。
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