ヌルボ・イルボ    韓国文化の海へ

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晋州(チンジュ)のお酒でチンジュねー

2013-11-29 07:44:38 | 韓国料理・食べ物飲み物関係
 晋州(チンジュ.진주)に行ってきたという方からおみやげをいただきました。

       

 お酒なんですが、ラベルを見ると「진주」とあります。
 晋州(진주)のお酒で진주とは、考えたネーミングというべきか、安易なネーミングというべきか(笑)。
 (すると清州の酒は清酒で、原州の酒は原酒ということになる? また、これも晋州とは同音の真珠は晋州の特産ということはないです。念のため。)

 この「チンジュ」、私ヌルボ、最初は「真酒」かなと思いましたが、王冠を見ると「珍酒」でした。

      

 ラベルには、何やらグジュグジャした植物の根が描かれています。「진주」の右に「장생도라지(チャンセントラジ)」とあるのが目に入って、トラジつまりキキョウの根ということがわかります。

      

 高麗人参に似ているので、たぶん薬酒なんだろうな、と思いました。「チャンセン」は「長生」だし・・・。王冠の「長桔」は「長生」と「桔梗」から1文字ずつ取っているのですね。
 (後で調べてみたら、高麗人参同様サポニンを含んでいて、去痰・鎮咳・鎮痛・鎮静・解熱作用があるとのこと。)

 飲んでみると、そんなに強くなく(14度)、味も香りもエグい感じのない、また甘ったるくもない飲みやすいお酒でした。

 これも後で調べてわかったことですが、この長生トラジというのは原料の名前というだけでなく、会社の名前でもあるんですね。
 また、「飲んだ人が長生きする」というより、トラジ自体が「長生きのトラジ」という意味なのです。

 2007年5月に「朝日新聞」が<けいざい一話>というシリーズの中の記事でこの長生トラジのことを記していました。(→コチラのブログ記事参照。)
 「韓国農業、起業の息吹」という見出しで「ベンチャー精神」が農村に浸透している例として日本に流通しているパプリカの4分の1を供給しているという金堤(クムジェ)の農産貿易と、この晋州の長生トラジを紹介しているのです。
 この記事によると、この長生トラジを創業したのは李栄春さん。農業を営むお父さんがトラジの薬効に注目し栽培を開始したがトラジはふつう3年以内に枯れてしまうので、薬効成分を高めるため移植を繰り返し、20年以上育つ品種を16年間もかけて開発したそうです。
 しかし、そのトラジをそのまま売っていたがうまくゆかず、約28億ウォンもの負債を抱えてしまいます。
 ところが、2001年サムスン経済研究所が中心となって忠清南道錦山郡にベンチャー農業大という(正式の大学ではない)学校が開校。李栄春さんはその1期生だそうで、そんな関係で彼は勤めていたサムスングループをやめて長生トラジを創業したようです。そして生のトラジの販売をやめてエキスやお酒、お茶などの製品に転換をはかります。その後抗がん作用や糖尿病の防止などが評判になって日本への輸出も始めたたとのことです。そして2006年の売上げは年間65億8千万ウォン(約8億4千万円)とか。

 韓国サイトを探索すると、<記者スクール>というブログの連載記事「伝統酒紀行」の中にこの珍酒についての記事(2010年)がありました。(→コチラ。)
 これによると、珍酒の生産・販売のきっかけは2002年道知事が「晋州は文化・芸術はあるのに代表する酒がないのが残念」と言って李栄春さんに提案したこと。最初は断ったが、「酒を造れば米市場も活性化する」と再度声をかけられ、応諾して翌年から研究を始めて3年かけて酒を完成したのですが、人々の反応は予想外なほどの不評。ここで撤退せず、不評の理由を分析すると、当時は40度を超える強いリキュール酒だった上トラジの香りもきついことが敬遠された原因とのこと。そこで度数を大幅に下げ、薬酒へと方向転換。珍酒と名称を変えたのもこの時。そして各地で無料試飲会を開き浸透を図って、今(2010年)では年間30万本の生産、7~8億ウォンの業績を上げているそうです。
 珍酒はこの会社の売上げの8%ほどということは、トラジを原料とした製品がそんなにたくさんあるのか?と思いますが、この会社の公式サイト(→コチラ)で<쇼핑몰(ショッピングモール)>のページを見てみると、トラジの粉末や錠剤の他、健康茶、キャンディやゼリー等の食品、石鹸やボディソープ等々がありました。

 なるほどなー、です。やっぱり「口当たりが軽やか」で「健康にいい」というのがトレンドですからねー。
 1ヵ月ほど前に「韓菓名人」金圭欣さんについての記事を書きましたが(→コチラ)、やはり起業して成功する人の足跡をたどると、ジャンルは違っても共通する要素がありますね。

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