ヌルボ・イルボ    韓国文化の海へ

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若手女性作家キム・エランが受賞した李箱文学賞は、日本の芥川賞みたいなもの・・・かな?

2013-03-04 23:16:52 | 韓国の小説・詩・エッセイ
 さあ、ゆっくり風呂場読書だ。話題の芥川賞作を読んでみるかなと「文藝春秋」2月号を開きかけたところで、1月号の読み残しを思い出しました。まずそちらからと、読み始めたのが沢木耕太郎「キャパの十字架」。2月3日(日)NHKスペシャルでも同内容のものを放映したそうですが、いやー、おもしろかったですねー。で湯舟に浸かったままイッキ読み。(昨日横浜美術館の「ロバート・キャパ/ゲルダ・タロー 二人の写真家」展も行ってきちゃいましたよ。※3月24日まで。)

 で、日を改めて芥川賞作に再挑戦・・・と思ったけど、ただでさえ気合いを入れないと読み始められない作品ぞろいの過去の受賞作と比べても、今回の「abさんご」は視覚的にも抵抗感があって結局再度延期することに・・・。

 芥川賞については、<芥川賞のすべて・のようなもの>という、歴代の受賞作・候補作と、各選考委員の審査評まで網羅したすごいサイトがあって、これだけで十分おもしろいのですが(とくに審査評)、肝心の受賞作自体は私ヌルボにとって「たいていはおもしろくない」のです。
 個人的に振り返ってみても、少年時代に最初に読んだ宇野鴻一郎「鯨神」(1961年上半期)ほどおもしろく読んだのは以後半世紀ないし、リアルタイムで読んで「うーむ、これは深いなー」と純文学の魅力に感じ入った作品も古井由吉「杳子」(1970年)だけだったかもしれません。
 (「杳子」は、「文藝」に掲載されたものを読んだ時点で友人との間で話題になりました。小説としての評価だけでなく、ひとつの時代の変化を示すものと受けとめた、ということです。)
 その他では宮本輝「螢川」(1977年下半期)・高樹のぶ子「光抱く友よ」(1983年下半期)・辺見庸「自動起床装置」(1991年上半期)・奥泉光「石の来歴」(1993年下半期)・阿部和重「グランド・フィナーレ」(2004年下半期)等は読み応えもあってその後の作品も読んだりしてきましたが・・・。

 で、芥川賞はおいといて・・・、という時にアタマにひらめいたのが韓国の李箱(イサン)文学賞のこと。
 日本の統治期の先鋭的な詩人・小説家だった李箱(이상.1910~37)の名を冠した、韓国で最も権威がある文学賞です。(ウィキの説明は→コチラ。)
 ※どーでもいいけど、賞金が3500万ウォンというのは芥川賞(100万円)よりずっと高額!

 本ブログでも、第34回(2010年)のパク・ミンギュ「아침의 문(朝の門)」、第35回(2011年)の孔枝泳「맨발로 글목을 돌다(裸足で文章の路地を廻る)」については、なんとか原文で読んで、感想等を記事にしました。→コチラ「朝の門」)
(・・・とリンクを張ったところで、「朝の門」の感想が書かずじまいになってることに気づきました。) そして→コチラ「裸足で文章の路地を廻る」

 この李箱文学賞のこれまでの受賞者を見ると、芥川賞作家と比べて、すでに他の文学賞を受賞しているとか、あるいは著作がよく読まれていて知名度が高い作家が多いようですね。上記の孔枝泳など、「え、まだもらってなかったの!?」という感じ。
 昨年第36回(2012年)「옥수수와 나(とうもろこしと私)」で受賞した金英夏(キム・ヨンハ)も、「阿娘(アラン)はなぜ」(韓国2006年→日本08年)、「光の帝国」 (韓国2006年→日本09年)と、めずらしく日本でも発表後ほどなく翻訳書が刊行されている注目作家で、李箱文学賞の方が後追いになっています。(→本ブログの関連過去記事。)
 ※金英夏はそれまで現代文学賞(1999年「あなたの木」、東仁文学賞(2004年「黒い花」)、黄順元文学賞(2004年「宝船」)、万海文学賞(2007年「光の帝国」)と韓国の文学賞をいろいろ受賞した末の李箱文学賞。黒田夏子さんとは対照的ですね。(何度も候補になっている覆面作家・舞城王太郎のような有名作家もいますが・・・。)

 そして今年の第37回李箱文学賞はといううと、1月のニュース(→コチラ)で、を若手女性作家・金愛爛(キム・エラン)「침묵의 미래(沈黙の未来)」で受賞したとのこと。
 「若手」といっても1980年生まれですから33歳。しかしこの賞受賞者の最年少記録だそうです。
 彼女については、2011年4月「毎日新聞」連載の<新世紀 世界文学ナビ [韓国編]>きむふなさんが初回に紹介していました。(→関連記事。) ←10人中、チョン・イヒョンを除く9人が李箱文学賞受賞者です。
 また、本ブログでも<2011年の韓国を代表する本は?>と題した記事の中で彼女のことを少し書きました。
 ヌルボ自身、今までに原文で読んだのは短編の「달려라, 아비(走れ、父ちゃん)」、翻訳で読んだのは「新潮 2010年6月号」掲載の「水の中のゴライアス」だけなので、コメントするにはまだまだ不十分。
 (後者に関係のあるこのブログの過去記事→コチラ、また関係ブログ記事→コチラ
 私ヌルボの信頼度が高いコチラのブログでは「韓国作品はまとめて書くけど、どちらも退屈。ナイフと水を象徴的に扱ったいかにも純文学な退屈さ。長く感じた」と書かれています。

 ところで、先日たまたまNHKラジオ「レベルアップ ハングル講座」3月号のテキストを見ると、そのきむふなさんが申京淑「母をお願い」韓江「菜食主義者」に続いて3月から教材としてとりあげているのが金愛爛「だれが海辺で気ままに花火をあげるのか(누가 해변에서 함부로 불꽃놀이를 하는가)」ではないですか。
 なんとタイミングのいいことで・・・。囲み記事で彼女やその作品のこと等がいろいろ説明されています。李箱文学賞受賞についても書かれています。きむふなさん、いつの時点でこの作品に決めたのでしょうか?

 ・・・とそんなわけで私ヌルボ、昨年末読み終えたチョン・ユジョン「7年の夜(7년의 밤)」の次に読む韓国書は李箱文学賞作品にしよう、と思った次第です。
 ところが今回の受賞作品集は1月後半に出たばかりなので横浜市立図書館にあるわけないし、では金英夏の前回受賞作「とうもろこしと私」でも読むか、と探したら韓国書の書架にナシ。
 結局、未読で最新の作品集で図書館にあったのは第33回(2009年)のもの。その回の受賞作のキム・ヨンス(金衍洙)「산책하는 이들의 다섯 가지 즐거움(散歩する者の5つの楽しみ)」を読むことにしました。

 ・・・ここまで書いたのが数日前。「散歩する者の5つの楽しみ」は20ページ余の短い作品なので、巻末の評論家による作品論等も含め2、3日で読み終えました。
 実はその感想がこの記事の本論だったはずですが・・・。またまた「続きは今度」ですね。

 ★その後「abさんご」も読み終えました。「週刊文春」の阿川佐和子と黒田夏子との対談を読んで「ストーリー性の全然ない話なのか」と思いましたが、読み進むとそうではありませんでした。一応。
 しかし、李箱文学賞作品と芥川賞作品と「どちらが読みやすいか?」、そして「どちらがおもしろいか?」。この難問にどう立ち向かうか、むずかしいなー、うーむ(笑)・・・。
 ※「どちらが読みづらいか?」、「どちらが意味不明か?」、「どちらがよりおもしろくないか?」などと書けないところがヌルボの弱気なところです。(あ、書いちゃった!)