ヌルボ・イルボ    韓国文化の海へ

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申京淑の小説「オンマをお願い」がアメリカで好評

2011-04-28 20:38:35 | 韓国の小説・詩・エッセイ
 1週間前、<韓国の「今」の作家たち>と題した記事で「毎日新聞」に連載中の「新世紀 世界文学ナビ 韓国編」について紹介しました。
 その中で私ヌルボ、「韓国で評価が確立し、今も活躍している作家をもっと紹介してくれなくっちゃ・・・。李文烈(イ・ムニョル)とか申京淑(シン・キョンスク)とか・・・」と注文をつけておきました。
 で、今朝「毎日新聞」を開くと「韓国編」はまだ続いていて、取り上げている作家がまさに申京淑ではないですか! 記事の内容は→コチラ
 ナビゲーターのきむふなさん、このブログを読んでくれたようです。ま、そんなこたあないか。

 連載の最初でなく、4回目の今日申京淑を取り上げたのはどこまで計算していたのかな、とヌルボは考えました。というのも、ごく最近彼女の超ベストセラー「オンマをお願い」の英語版Please Look After Momがアメリカで刊行され注目されるとともに、ベストセラーの上位にも入っているということが、韓国の各メディアで大きく伝えられているからです。
 で、この「毎日」の連載に今日載ってなくても本ブログに書くつもりだったんですよ、じつは。

※中でも詳しいニュース(日本語版)は→コチラ
※「ニューヨークタイムズ」の記事は→コチラ(英文)。
※4月28日付のニューヨークタイムズ電子版によると、Hardcover Fiction部門で14位。
アメリカのAmazonでは、現在30のレビュー中22が★5つ。1

 それら韓国発のニュースを見ると、「オンマをお願い」のアメリカでの出版社が村上春樹の本を出しているクノップ社。その取締役は「(170万部売れた)韓国に負けないくらい米国の読者もこの本を愛すると確信し、初版を10万部に決めた」とか、「春樹より初版部数は多い」とか、相当に興奮気味のようです。一般読者も再注目で、YES24等の書籍通販のサイトではまたベストセラー1位になってます。
※韓国文学翻訳院の支援により米国で出版された韓国文学で、最も大量の初版部数を記録したのは、2006年発売の高銀(コ・ウン)の詩歌集「南と北」の5000部。国庫の支援を受けず民間で出版された本では、2010年9月やはりクノップ社から発売されたキム・ヨンハの小説「光の帝国」の6000部とのことです。

             
   【表紙は原作本(右)とは全然違います。意図的に東洋人らしい写真を用いたのでしょう。】

 「オンマをお願い」は2008年11月刊行以後、韓国に<オンマ・シンドローム>を巻き起こした小説ですが、なにをかくそう私ヌルボ、2009年8月11日のこのブログの記念すべき(?)1回目の記事で<韓国の大ベストセラー 申京淑「オンマをお願い」、翻訳本刊行を期待!>と題して紹介してたんですねー。
 実際、なんと世界24ヵ国で翻訳出版されるということになり、けっこうなことですが、「毎日新聞」の記事によると、「母をお願い」(←記事ではこう表記)は日本では集英社から発売されるのが今年の9月だとか。おそらく、訳者の安宇植先生が昨年12月に亡くなったという事情もあって遅くなったのかも・・・。
※「をお願い」だと、「オンマ」という語に込められた子→母の情が感じられないので、ヌルボとしては納得できません。かといって「お母ちゃん」というのも今は死語となりつつあるし、「ママ」は西洋っぽいし・・・。安宇植先生は「離れ部屋」で「オムマ」としていましたが・・・。まあ、「オンマ」か「お母さん」ですかねー。

 このようにいろいろとニュースになっているのを機会に、多くの人が申京淑や韓国の文学に対して、もっと関心をもつことを期待したい、というのがヌルボの願いです。

※申京淑の小説の特徴や、文学史的な位置について、わかりやすく書かれている記事がありました。(日本語)→<KOREANA>のサイト中の「小説家 申京淑 希望と疎通を語る彼女特有の方法」。筆者は「ハンギョレ」の文芸担当の記者、かな?

※申京淑の小説を未読の方にぜひお薦めは、「毎日」の記事にもあった「離れ部屋」。数年前読んでとても感動しました。(←単純すぎる感想で恥ずかしい。) →ヌルボが愛読しているブログ<晴読雨読ときどき韓国語>を参照のこと。

※申京淑の昨年のベストセラー「どこからか私をよぶ電話が鳴って」の紹介記事は→コチラ

 さて、「毎日新聞」の「新世紀 世界文学ナビ 韓国編」が来週も続くとすると、今度は本命=孔枝泳でしょう。対抗は、うーむ、「妻が結婚した」パク・ヒョヌクあたりかなー。それからウン・ヒギョン・・・(?)。

[追記] 「毎日」の記事の<作家本人から>の文中、「中沢けいさん、島田雅彦さん、平野啓一郎さんのような作家と会い、彼らの作品を読んだことは大きな喜びだ。韓国で無作為に紹介されている日本の小説とは一味違う本格的な文学作品に接し、その多様な世界に強い印象を受けた」とあります。この韓国で無作為に紹介されている日本の小説とは、近年韓国のベストセラー上位に常にランクされている、奥田英朗等のエイタテインメント系の小説をさしています。「どこからか私をよぶ電話が鳴って」の執筆動機についても同様のことを語っていました。真摯な純文学を旨とする彼女らしいところです。
コメント (4)
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