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三浦周行「鎌倉時代の朝幕関係 第三章 両統問題」(その8)

2022-04-18 | 2022共通テスト古文問題の受験レベルを超えた解説
※小川剛生氏「謡曲「六浦」の源流─称名寺と冷泉為相・阿仏尼」のタイトルで(その11)まで進めて来ましたが、三浦周行論文の紹介が長く続いて内容とタイトルに齟齬が出来てしまい、後で検索する際に不便が予想されるので、(その5)以降のタイトルを「三浦周行「鎌倉時代の朝幕関係 第三章 両統問題」と変更しました。


「第五節 持明院統の御主張」を、三浦の立論の基礎となった史料とともに紹介してきましたが、結論として、あまり説得力のあるものではないですね。
三浦も、この節の纏めとして、

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 其他持明院統の御主張は一として正面より積極的に後嵯峨法皇の御思召が後深草上皇にありしを立証するに足るものなきのみならず、却て寧ろ法皇が亀山天皇の治世の君に定められ給へかしと望ませられしことの朧げながらも窺ひ奉らるゝものあるなり。亀山天皇の皇子世仁親王を愛して、当時後深草上皇に二才御年長の皇子煕仁後の伏見天皇 のおはしゝにも拘らず、親王を皇太子に立て給ひしが如き、法皇の御在世中の御定にして、此点より見ても、大宮院の幕府に仰せ遣されし法皇の御素意は、必ずしもこれを矯められしことゝも考へられず。
 されば縦し皇位の継承に関する後嵯峨法皇の御素意が、亀山天皇の御一統に限られて後深草上皇の御一統を永久に除外すべしと迄思召したりとは信ずべからざるにもせよ、当面の問題として法皇が亀山天皇の御親政を望み給ひしことも、又世仁親王の未来の皇位を期待し給ひしことも、並びに事実にして、後嵯峨院の御在世中、幕府が此御素意に従つて、亀山天皇を治世の君と定め奉りしは、強ちにこれを咎むべきにあらず。

http://web.archive.org/web/20061006212841/http://www015.upp.so-net.ne.jp/gofukakusa/miura-hiroyuki-ryotomondai-02.htm

と書いています。
さて、三浦論文はこの後、

第六節 両統問題の経過
第七節 両統君臣の疎隔
第八節 両統の色彩
第九節 両統分争と御領

と続きます。
「第六節 両統問題の経過」では、大宮院が幕府に表明した「後嵯峨院の御素意」が真実なのかを後深草院が疑い、

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 此御不信はやがて御不満を生じ、そが一の導火線となりて、両統分立の火の手を挙げ、爾来幾多の波瀾、曲折を経て南北朝の分立とはなれり。此点につきても、従来の研究は、増鏡、梅松論、太平記其他二三の記録に拠る位にて、事件の真相は猶ほ未だ知られざるもの多きが如し。余は今此間の経過を分ちて五期となし、これより逐次其概説を試みん。
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ということで、文永九年(1272)の後嵯峨院崩御からより元弘三年(1333)の鎌倉幕府滅亡までを五期に分けて「概説」されますが、現時点ではもう少し細かな議論になっているので、あまり参考にならないですね。
「第七節 両統君臣の疎隔」と「第八節 両統の色彩」も簡略に過ぎる議論であり、省略します。
「第九節 両統分争と御領」は、

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 終りに臨みて、一事の弁ぜざるべからざることは両院の御分争と御領との関係これなり。従来一般に両皇統の御争に附帯して各御領の御争ありしと思考せらる。即ち後嵯峨院は後深草院に長講堂領等の御領を譲られし代りに、御子孫永く皇位の望を絶たしめられたりといふが如き、後、後醍醐天皇より幕府に向つて持明院統の大位に即かせらるゝ間は、長講堂領は亀山院の御子孫に進めらるべき由を諭されしといふが如きことこれなり。

http://web.archive.org/web/20061006212846/http://www015.upp.so-net.ne.jp/gofukakusa/miura-hiroyuki-ryotomondai-03.htm

と始まって、室町院領のことなどが細かく議論されており、当時の研究水準としては相当なものですが、現時点では古くなってしまっているので、これも省略します。
ということで、恒明親王問題を理解するための初級編、三浦周行「鎌倉時代の朝幕関係 第三章 両統問題」はこれで終えることとし、次の投稿から中級編:三浦周行「両統問題の一波瀾」(『日本史の研究 第二輯』、1930)に入ることとします。
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