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「在野」の謎

2014-08-30 | 歴史学研究会と歴史科学協議会
投稿者:鈴木小太郎 投稿日:2014年 8月30日(土)12時35分18秒

細かなことかもしれませんが、深谷克己氏の「在野」の用法、よく分からないですね。
ウィキペディアを見たら深谷氏は早稲田大学文学部を卒業し、同大学院文学研究科史学専攻博士課程満期退学。早稲田大学文学部助手→専任講師→助教授→教授→名誉教授という具合に人生早稲田一色で、まあ、早稲田といえば普通は大隈重信の「在野精神」を連想しますから、早稲田ブランドとの関係がまず謎ですね。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B7%B1%E8%B0%B7%E5%85%8B%E5%B7%B1

ついで深谷克己氏は、その著作を見る限り歴史学研究会・歴史科学協議会の中心的メンバーだったようですが、両団体とも「在野」を標榜しているはずじゃないですかね。
試しに「在野」&「歴史学研究会」で検索してみると、保立道久氏のブログが出てきて、「私は歴史学研究会という在野のインターカレッジの学会の古代史部会で学問の手ほどきを受けたのだが」などと言われていますね。
従って所属研究団体との関係が謎の二点目。

『社会科学と信仰と』ー大塚久雄先生のこと
http://hotatelog.cocolog-nifty.com/blog/2010/08/post-699f.html

また、立命館大学文学部日本史専攻のサイトには、

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戦後直後から、北山茂夫(古代史)、林屋辰三郎(中世史)、奈良本辰也(近世史)、前田一郎(思想史)、岩井忠熊(近代史)などのきわめて著名な研究者を擁し、その学風は「立命史学」とよばれてきました。その特色は、中央中心の歴史学が見落としてきた史料を堅実に掘り起こし、それらの史料を縦横に活用しながら、民衆の立場からダイナミックな歴史像を復元していくことにあります。こうした学風は、巷間から幅広い支持を集め、日本史学専攻は文字通り「在野史学」の騎手たる地位を築きあげてきました。
http://www.ritsumei.ac.jp/acd/cg/lt/jh/chara.htm

とありますが、「中央中心の歴史学」と対比して「民衆の立場からダイナミックな歴史像を復元」する学風を「在野史学」と呼ぶのも割とよく見かけるパターンなのに、「民衆運動史研究の第一人者」であるはずの深谷克己氏はそのような用法とは無縁みたいですね。
この学風との関係が謎の三点目ですね。

改めて深谷氏のエッセイを見ると、前回投稿で引用した部分に続けて次のような記述があります。

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 おおよそ八〇年代以降の学界で最前線を担ってきたのが「現代歴史学」だとすれば、その面々はおそらく大学院の専攻課程を経てきている。近年であれば博士学位を取得しているのが当たり前という傾向も進んでいる。今度の『岩波講座日本歴史』はそうした執筆者に支えられているはずである。しかし「戦後歴史学」の担い手が先頭に立っていた頃は、大学院制度は全国的に見れば成熟しておらず、多様な訓練のコースを経た研究者が少なくなかった。専門的研究者と市民的研究者の境界は曖昧であった。
 平沢氏の場合は、下伊那の研究に徹したが、信濃史学会に属して成果を発表し、また全国的な学会誌にも登場の機会を持ち、伊那谷の仲間的な刊行活動にも支えられるという、個性的な履歴を刻んだ「在野」の研究者であった。
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これを見ると、深谷氏にとって「大学院の専攻課程を経て」いるのが「専門的研究者」であって、そうでない人は「非アカデミズム」研究者=市民的研究者=「在野」ということですかね。
この基準だと史学系の学部は卒業していても大学院を出ていない羽仁五郎・林基・藤間生大の三氏は確かに「在野」と分類されることになりますね。
あと、考えられる可能性としては、学歴よりもむしろ職歴に注目して、羽仁五郎の東大史料編纂所在籍は短すぎるので無視、林基の専修大学、藤間生大の熊本商科大学(熊本学園大学)は偉大な早稲田大学と比べると大学としてのレベルが低すぎるので無視、ということですかねー。

羽仁五郎
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%BE%BD%E4%BB%81%E4%BA%94%E9%83%8E
林基
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9E%97%E5%9F%BA
藤間生大
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%97%A4%E9%96%93%E7%94%9F%E5%A4%A7
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