大福 りす の 隠れ家

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みち  ~道~  第126回

2014年08月19日 13時50分19秒 | 小説
『みち』 目次



『みち』 第1回から第120回までの目次は以下の 『みち』リンクページ からお願いいたします。

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『みち』 ~道~  第126回



「なに? 何か思い当たる事があったの?」

「ご縁かどうかは分かりませんけど、2度とも同じ山に登ったんです。 それで2度目に行った時なんですけど 切っ掛けは何故だか急に滝に行きたいと思って・・・結局、山登りになっちゃったんですね。 それで下山してから滝には行けたんですけど・・・あ、その滝っていうのはその山の中にあるんですね。 それで・・・滝に行くまでの道で訳もなく涙が溢れてきたんです。  それと・・・」 温かい存在の話をした。

「そうなの、そんな事があったの。 ね、覚えてるかしら? あの時、和尚も言ってたでしょ? 魂に触れると意味がなく涙が出るって」

「あ、そう言えば・・・」

「ね? その場所に来て琴音さんの魂が喜んだのよ」

「・・・」

「その着物みたいな服を着てらっしゃったのは もしかしたら琴音さんの守護霊様かもしれないわね。 琴音さんがそこへ行ってくれて守護霊様も喜んでいらしたのかもしれないわね」

「はぁー・・・」 更紗の話に溜息が漏れた。 そして

「あ!」

「え? なに? どうしたの?」

「あ、ごめんなさい急に大きな声を出して」

「いいわよ、それよりどうしたの?」

「涙で思い出したんです」

「なに?」

「これも訳が分からないんですけど・・・山に行く前になるんですけどお寺に行ったんですね」

「お寺?」

「はい。 初めて行ったお寺なんですけど 何て言っていいのかしら・・・懐かしいって言うか、押し潰されるって言うか自分でもよく分からないんですけど 知らない間に涙が出てきたんです。 でもその時の感覚は滝の時とはまた全然違っていたんですけど」

「お寺にはよく行くの?」

「いえ、社寺仏閣は好きじゃなかったんですけど急にそこへ行きたくなって」

「きっとそこもご縁のあったお寺だったんじゃない? 守護霊様が今までご縁のあった所に導いてくださっているのかもしれないわよ」

「でも なんて言うのかしら。 どちらかといえば苦しいって言うのかしら。 それに・・・」 本堂の前で手を合わせたときのこと、目の前が真っ赤になったことを話した。

「凄い体験ね」

「なにが何だか分からないんですけど」

「私は霊能者とかっていうのじゃないからよく分からないんだけど そこも導かれた場所で滝の時のようではなくて どちらかといえば過去の清算に行ったのかもしれないわよ」

「過去の清算って?」

「その瞼に広がった赤い血のような色は本当に血だったのかもしれないわね。 琴音さんの記憶の中にある血の色」

「私の記憶?」

「そう、遠い遠い記憶。 琴音さんの魂の記憶の一つ、悲しみの記憶。 それを浄化しに行ったのかもしれないわ」

「浄化・・・ですか?」

「昔、きっとそこに居たんじゃないかしら。 それで懐かしさはあるけど悲しい事が起きたために押し潰されるような感覚になったんじゃない
かしら。 その悲しい事があまりにも大きすぎていつまでも魂が悲しんでいたのを守護霊様は知ってらしてそこへ導いてくれたのかもしれないわよ。 そこへ今生行く事で・・・涙を流して悲しみが浄化されたのかもしれないわ」

「そんな事ってあるんですか・・・?」 今まで想像もしてこなかった事だけに少し表情が暗くなってきた。

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