「不毛地帯」の1巻からまた読み始めた。無条件降伏の後に、シベリア抑留された関東軍、また民間人の悲惨苦難など、読むのがしんどいが、物語の随所に語られる作家本人の正確な現実認識と志操の高さに、読者の私は目の前の現実に立ち向かう勇気を貰える。
以前、ナチスに迫害されたユダヤ人収容所の作家実体験小説「夜と霧」を読んだことなどを思い出す。虚構の山﨑作品は、迫力において「夜と霧」に劣らない。
ソ連軍に侮辱され、屈辱のあまり誇りある死を願いながら叶えられず、絶望する主人公壹岐に、「生きて歴史の証人たれ」と諭す谷川大佐の言葉は素晴らしい。
この言葉が、その後の壹岐の商社マンとしての過酷な第二の人生を節目で支えてゆく。
山﨑作品は、主人公だけでなく、読者に光に向かって生きる力をくれる。壹岐は、たぶん「生き」だろう。すてきなネーミング。
山﨑豊子さんに感謝。
ペンドローイング、吹雪。