市の星月夜日記

織江市の短歌、エッセイ

立ち尽くす去来の荒野ふゆの胸をきり拓くほど未知は続きぬ

2021-12-04 20:30:00 | Weblog

 「不毛地帯」1巻を再読終えた。

 作家は、主人公壹岐正の前半生の舞台、流刑の地シベリアの不毛と、後半はエリート商社マンとしての第二の人生である資本主義社会の荒野をかけているのだが、その思想はともかく、文学としての中身の豊穣さに感動してしまう。

 山﨑さんは、たぶん源氏物語をよくお読みだったに違いない。主要な登場人物のキャラクターを、その衣装で演出するのが見事だ。それは一般的にどの作家もしているが、山﨑豊子さんの衣装センスは、私から見て、文脈に即して的確で、華麗で、無駄がない。まるで紫式部みたいだ。ことに女性たちの衣装設定は素晴らしい。随所で源氏物語を読んでいるような気になる。

 情景描写も心理描写も綿密で美しく、苛烈で、冷徹。

 不毛どころか、広大で、肥沃な文芸だ。

 私は長年、日本の作家では、三島由紀夫と紫式部を最高に好いてきたが、ここしばらくは山﨑豊子さんに傾倒しそう。

 魅力を超えて魔力のように惹きつける文体だ。題材が何であれ、人間の普遍的な欲望をテーマにしているところもいい。 シェークスピアや、ドストエフスキーもそうだった。

 こんな年齢になってから、夢中になれる文学に出会えたのは幸せと思う。

 


 今日はちょっと体調が悪かったが、読書で気持ちが紛れた。
 
 感謝。


 

 
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