ギリシャ神話あれこれ:ペレウスの結婚(続々々)

 
 こうして、ペレウスはめでたくテティスと結婚する。

 宴には神々が揃って臨席し、豪勢な祝いの品を二人に贈った。ポセイドンは不死の馬、クサントスとバリオス、ヘファイストスは黄金の鎧、ケイロンはトネリコの槍(アキレウスはこれらをトロイア戦争に持参した)。そして……

 そして、唯一宴に招かれなかった不和の女神エリスが、宴席に乗り込み、ヘスペリデスの園から取ってきた黄金の林檎を放り込む。「最も美しい方へ」と書きつけて。
 この金の林檎をめぐって、ヘラ、アテナ、アフロディテの3女神が美を争い、後のトロイア戦争へとつながってゆく。

 さて、ペレウスとテティスのあいだには、後の英雄、アキレウスが誕生する。

 テティスはアキレウスを不死にするため、冥府を流れるステュクスの川水を満たした甕のなかにアキレウスを浸した。が、それをペレウスが覗き見て、大声で非難する。生まれたばかりの赤ん坊を、踵をつかんでぶら下げて、水のなかに押し込んでいたのだから、ペレウスの眼に虐待と映ったのも無理はない。
 だが、テティスはすっかり腹を立てて、もともとペレウスのことなんて愛してなかったもんだから、夫子を捨ててさっさと実家の海底に帰ってしまった。

 妻に逃げられたペレウスは、赤ん坊を抱えて途方に暮れ、その養育を馬人の賢者ケイロンに託す。

 で、その後ようやく、同志を募ってイオルコスを攻略、王妃アステュダメイアを殺して前妻に報いた。このとき彼は、王妃の屍をバラバラにして道に撒き散らし、それを踏みつけながら兵士らを進軍させたという。怖。

 画像は、ドラクロワ「アキレウスの教育」。
  ウジェーヌ・ドラクロワ(Eugene Delacroix, 1798-1863, French)

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