ギリシャ神話あれこれ:12の功業その12(続)

 
 さすがのケルベロスも、ヘラクレスには怖れをなしたという。館の門から逃げ出し、ハデスの王座の下に隠れてしまった。
 ヘラクレスはハデスに、番犬ケルベロスを連れ帰るのを許してもらいたい、と申し出る。ハデスはペルセフォネに取りなされて、では、ケルベロスを傷つけずに、素手で降参させたなら、地上へ連れ出すことを認めよう、と答える。

 ケルベロスはテュポンとエキドナの子で(だから、ヘラクレスが退治したネメアのライオンやヒュドラ、ゲリュオンの番犬オルトロス、ヘスペリデスの園の竜ラドン、プロメテウスを襲った大鷲、みーんなケルベロスの兄弟というわけ)、三つの犬の頭と、一匹の竜の尾、背には無数の蛇のたてがみを持つ。口からは火を吐き、たてがみの蛇たちは毒を吐く。
 ヘラクレスはライオンの毛皮を身に纏い、ケルベロスに向かうと、いきなり、3つの犬の首を抱き込んで羽交い絞め。ケルベロスは、ギャオン! ギャオン! 必死で抵抗し、竜の尾でガブリと噛みつく。が、ヘラクレスは絞めるのをやめない。
 ヘロヘロになったケルベロスはとうとう観念する。

 こうしてケルベロスは、ヘラクレスに連れられて地上へと引きずり出される。初めて太陽の光を眼にして、びっくり仰天、ギャオンと吠え立てた際、地面に落ちた唾液からトリカブトが生まれたという。

 エウリュステウス王はケルベロスを見ると震え上がり、青銅の甕のなかに隠れて、ヘラクレスが再び冥府へと連れ帰るまで、そこから出てこなかった。

 長い年月をかけて無事、12の難業を終えたヘラクレスは、ようやく! ようやく自由の身となって、テバイへと戻っていく。

 画像は、スルバラン「ヘラクレスと番犬ケルベロス」。
  フランシスコ・デ・スルバラン(Francisco de Zurbaran, 1598-1664, Spanish)

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