ギリシャ神話あれこれ:川神アソポスとニンフ・アイギナ

 
 ギリシャ神話には、都市や人物の由緒を説明するために作られた(と思われる)、印象薄い物語がたくさんある。エピソードをインプットする私の脳みそには、この手の物語がなかなか根付かない。
 アイギナの物語は、そのぎりぎりボーダーラインにあるような類のもの。

 ボイオティアの東を流れるアソポス川の神は、数多い娘のなかでも、末娘アイギナを溺愛していた。が、あるときゼウス神がこの川のニンフに眼をつけ、大鷲に姿を変えて無理やりさらってしまう。

 アソポスは血眼になって娘の行方を尋ね歩き、とうとうコリントスで、王シシュポスから、たった今、鷲がそれらしき娘を連れて行くのを見た、と聞き出す。城砦に水の涸れない泉をくれれば、鷲が飛び去った方角を教えてやってもいい、と持ちかけるシシュポスに、アソポスはすぐさま泉を湧き出させる(このペイレネの泉には、やがて神馬ペガソスがやって来るようになる)。
 後にシシュフポスがタルタロスへと落とされたのは、このときゼウスの秘事を売ったことに起因する。

 で、アソポスは鼻息荒く、指し示されたほうへと鷲を追いかける。あわや追いつこうというとき、ゼウスは振り返りざま、得意の雷霆を叩きつけた。

 ビビビッ! 感電してノビてしまったアソポス。やがて起き上がると、やはり川の神などゼウスの敵ではないと思ったか、娘のことは金輪際諦めて、まだプスプスと煙を燻らせながら、すごすごと帰っていった。
 以来、アソポス川はやたらにのろのろと流れ、しかも川底には黒焦げになった石炭の塊が出るのだという。

 さて、ゼウスはアイギナをオイノネ島(後のアイギナ島)へと連れて行き、想いを遂げる。こうして産まれたのが、最も敬虔な人間として知られるアイアコスだった。

 画像は、グルーズ「アイギナのもとに通うユピテル」。
  ジャン=バティスト・グルーズ(Jean-Baptiste Greuze, 1725-1805, French)

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