ギリシャ神話あれこれ:ゼウス

 
 モーツァルトの交響曲に、「ジュピター」というのがある。モーツァルトの大ファンである相棒は、この曲の痛快で壮快なイメージに釣られて、つい最近まで、ジュピターというのはさぞかし痛快で壮快な神に違いない、と思い込んでいた。
 で、「美女に惚れまくって、力ずくでも必ず手を出す、狒々爺いだよ」と教えてやったら、「えー、うっそー?!」とカルチャー・ショックを受けていた。
 
 ゼウス(ユピテル、ジュピター)は全能の最高神で、神々の王。天空を支配し、雲や雨、雷を司る。また、人間社会の政治、法律、道徳など、すべての秩序を司る。
 雷霆と呼ばれる、炎の矢を束ねたような稲妻を操る。彼のそばにはいつも、いかめしい大鷲が仕えている。

 が、どえらい浮気者で、惚れた美女は必ずモノにし、孕ませる。恐妻ヘラの監視を巧みに掻いくぐり、数々の愛人騒動を巻き起こしながら、それでも懲りずに美女たちを掻き口説く。
 このとき、妻を出し抜き、愛人の警戒を解くのに大いに役に立つのが、変幻自在に姿を変えることのできる彼の能力。この変身の力はゼウス神に限ったものではないのだけれど、最も有効に活用しているのは、やっぱり彼。
 人間の女性たちはもちろん、神である彼の娘や姉たちも、最高神の求愛には抵抗を許されない。そして交わったが最後、100パーセントの確立で妊娠する。

 浮気な性格ばかりが取り沙汰されるゼウスだけれど、実際のところは狡知に長けた統治者であるらしい。眼をつけた美女たちを落とすのに、性懲りもなく、あれやこれやの奸計や強行や調整などを図ることから考えても、彼は大した政治家なのだ。
 また、彼が多くの女性に手を出して、数え切れないほどの子供を産ませたというのも、考えてみると仕方がない。当時の権力者たちはみんな、我もまた主神の血筋だと主張したかったに違いないのだから。実際、神話でも、ゼウス神の子孫はみんな、神や英雄、国王などとなって活躍し、繁栄している。

 ジュピターが木星の名であるのは、太陽系でずば抜けて最大の惑星だからだとか。

 が、いくら偉大と言われても、私には、やっぱり狒々爺いに見える。
  
 画像は、トーマ「ユピテル」。
  ハンス・トーマ(Hans Thoma, 1839-1924, German)

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