ギリシャ神話あれこれ:狡猾の権化

 
 私は狡知は好き。無知よりも絶対にいい。ハリー・ポッターの“組み分け帽子占い”では、私は「狡猾」のスリザリン寮生に選ばれた(ちなみに相棒は、「勇敢」のグリフィンドール寮生)。
 明智小五郎は怪人二十面相との闘いで、これは知と知の闘いだ、だが最後には正義の知が悪の知に勝つ、と言っている。でも私は、優れた知のほうが勝つと思う。それが悪知であろうと。悪の知が正義の知に負けるのは、悪知のほうが視野が狭く、目的が限定的だからだ。

 さて、コリントスの王シシュポスは、最も狡知に長けた人間として知られる。

 パルナッソス山麓に、アウトリュコスという盗賊が住んでいた。彼はヘルメス神の子で、父神の力を受け継いで、巧みに盗み、しかも戦利品の姿形を変える力を持っていた。ちなみに、ヘラクレスが濡れ衣を着せられた、オイカリアの王エウリュトスの牛群盗難事件の真犯人は彼。
 とにかく、欲しいままに牛を盗んできては自分のものとし、牛の毛色や角を変えて、しらを切っていたアウトリュコス。とうとうシシュポスの牛にも手を出して怪しまれる。狡猾のシシュポスと、嘘と窃盗の達人アウトリュコスとの悪知恵比べ。

 シシュポスは一計を案じて、牛の蹄の窪みに自分の頭文字を烙印しておく。まもなく牛群が失踪すると、彼は証人たちを引き連れてアウトリュコスを訪れ、蹄の名を確認。証人たちがアウトリュコスを責め立てている間に、牛の補償とばかりに、アウトリュコスの娘アンティクレイアとちゃっかり交わる。
 結果、生まれたのが、知将と名高いオデュッセウスで、彼のしたたかさは、父シシュポスと祖父アウトリュコス双方から受け継がれたものだという。

 そのシシュポスは、タルタロスで永久に巨石を押し上げる責め苦を負わされている。その理由は……

 To be continued...

 画像は、シュトゥック「シシュフォス」。
  フランツ・フォン・シュトゥック(Franz von Stuck, 1863-1928, German)

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