ギリシャ神話あれこれ:義人アイアコス

 
 ギリシャ神話に登場する男性にはロクなのがいない。美貌や武芸や勇気、そういうものしか長所にならない。敬虔は当てにならない。知恵は、ギリシャ神話では概ね、術策を意味する。義侠は誠実を意味しないし、誠実は、ギリシャ神話には存在しない。……と思う。
 神話でなければ、やってられない。

 川神アソポスの娘、ニンフのアイギナは、ゼウス神に眼をつけられてオイノネ島(後のアイギナ島)へと連れ去られ、そこでゼウスの子を産んだ。それが、後に最も敬虔な人間として知られることになるアイアコスだった。

 が、やがてヘラ神の嫉妬によって、島にはおびただしい数の蛇が送り込まれる。蛇の群れはあらゆる川を汚染し、結果、島には疫病が蔓延。島民は水が飲めずにバタバタ死んでいった(あるいは、もともと無人だったともいう)。
 このときゼウスは、アイアコスの祈りを聞き入れ、樫の木に群がる蟻を人間に変えて、島民として彼に与える。彼らはミュルミドン(蟻の男)と呼ばれ、勤勉に働くだけでなく、戦争では一糸乱れぬ隊列で戦った。

 アイアコスの孫に当たる英雄アキレウスは、後にトロイア戦争にて、このミュルミドンを率いて参戦している。

 アイアコスは生前、アイギナ島の王として統治した。神々に対して敬虔で、行為も正しかったことから、ギリシア全土から尊敬を受けたという。
 神々への不敬から旱魃に襲われた際にも、彼はゼウスに祈って雨を得た。また、アポロンとポセイドンがトロイアの城壁を築いた際、敬虔な気持ちから(と言うのは、神によってのみ築かれた城壁は不落となり、人間の傲慢を助長するので)、その作業に加わった。

 こんな敬虔な彼であるから、死後はミノス、ラダマンテュスとともに、冥府で死者を裁く裁判官(とケルベロスの散歩係)となったという。

 画像は、フランケン(子)「アイアコス王とミュルミドン」。
  フランス・フランケン(子)(Frans Francken the Younger, 1581-1642, Flemish)

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