ギリシャ神話あれこれ:12の功業その11(続々々)

 
 黄金の林檎を求めるヘラクレスの旅。リビアからようやく外海に出、再び太陽神ヘリオスから黄金の杯を借り受けて、海を渡る。そして、カウカソス(コーカサス)へとたどり着く。
 その山頂には、ゼウスに叛いて人間に火をもたらした罪で磔にされた、あのプロメテウスがいた。不死である彼は、生きながらにして毎日、繰り返し大鷲に肝臓をついばまれるという罰を受けていた。
 
 ヘラクレスがカウカソスへとやって来たとき、プロメテウスがゼウスに縛められてから、実に3万年という長い年月が経っていた。この間、ゼウスの怒りは和らぎ、人類に対しても寛容と正義をもって統べるようになった。
 一方プロメテウスのほうも、こうしたゼウスの変化を見て、和解を考えるようになったていた。
 
 実は、予見の力を持つプロメテウスは、ゼウスの将来について、ある秘密を握っていた。彼は、もしゼウスがあのまま人類に対して不正な統治を続けるなら、敢えてゼウスを破滅から救うつもりはなかったのだが、ここに来て、ようやく和解を持ちかけたゼウスに歩み寄る。
 その秘密とは、ネレイデス(=海神ネレウスの娘たち)の一人、海の女神テティスから産まれる子は、その父に勝る運命にある、というもの。ゼウスが昨今、何も知らずに熱心に求愛しているのが、そのテティスだった。

 で、プロメテウスはゼウスに忠告を与える。もしテティスと交われば、父に勝る運命を負って誕生するその子供によって、かつてクロノスがウラノスを追い、同じくゼウスがクロノスを追ったと同じように、ゼウスもまた天上の王座を追われることになるだろう、と。

 画像は、グリーペンケル「プロメテウスを解放するヘラクレス」。
  クリスチアン・グリーペンケル(Christian Griepenkerl, 1839-1912, German)

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