「死刑にいたる病」 小説あり 映画あり
死刑を冠した作品は、気になる。この小説も、そう。題名が強烈なのだもの。
東京拘置所の死刑囚から手紙が届く。最後の殺人は、冤罪なのだと。おやや、二重に気になるじゃないか。
面会に行った大学生が調査を始める、関係者に聞き取りを進めていく。こいつ、選民思想の輩。そのくせ途中から落ちこぼれて、いじいじしてる二十歳。コンプレックスの塊。
二四件の連続猟奇殺人。最後の一件は違うって。弁護士から見放され、支援者なんていない。
ひとり落ちこぼれ大学の法学部生が、弁護士事務所の偽名刺を持って聞き取り調査。次第に分かってくる事柄。なにやら引き込まれてしまう。
つじつまが合いすぎる。なんだこれ。途中で「これって死刑囚の存在を、娯楽にしてるのか」死刑囚エンタテイメントという部門があるのかという気持ちもよぎるが、どきどきする展開が気になって止まらない。
獄中から人を操る術って、「羊たちの沈黙」レクター博士みたいな奴。この死刑囚。
題名は、キルケゴール「死にいたる病」からきている。分かったような、分からんような。
★ ★
さて五月公開の映画のほう。阿部サダヲが秩序型の猟奇殺人者の役。とっても気持ち悪いんだけど、これ演技なのか。びっくり。
優しそうな笑顔に騙されるひと多々。看守まで手懐けてしまうんだ。怖い。時節柄、統一協会を連想したりする。邦画って、内心を大げさに表すからかなあ。
最後の頃の科白に、「強いストレスを感じながら育った子は、自尊心が低いから、そこをくすぐってやれば簡単に言いなりになる」。
そうなのかなあ。こわいよお。支配、被支配。サイコ・サスペンス。
拷問場面は、超越に怖いので心臓が弱いひとは見ないほうがよい。
傍聴場面では、裁判ウオッチャー阿曽山大噴火が目立つ(微笑)。
監督は、「日本で一番悪い奴ら」や「孤狼の血」シリーズ、若松プロを描いた「止められるか俺たちを」の白石和彌。
★「死刑にいたる病」櫛木理宇 ハヤカワ文庫
★映画「死刑にいたる病」白石和彌 監督
この原稿を書いてたら隣町の中学生が「死刑になりたい」ゆえに、通りすがりの二人を刺す事件。十五歳の女の子に、そんなことさせるなんて嫌。やはり死刑は廃止だ。