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奥さまは愛国! 右に行く女たち

2015年01月25日 | 

奥さまは愛国! 右に行く女たち

その女性は、私の会社の隣人で、とても裕福に暮らしていた。都内の一等地に大きな一軒家を購入し、子供は有名私立に通い、夫は大企業に勤め、自身は専業主婦。どこから見ても、「勝ち組」である。彼女の家からは時折、夫が暴れ彼女が叫ぶ声が聞こえてきた。警察沙汰になったこともあった。ある日、私は彼女に「DV被害者支援」のパンフレットを渡した。彼女はパンフレットを見た瞬間に激怒した。そしてこう言い放ったのだ。「あなたみたいな女、大嫌いなのよ。被害者意識が強くて」。

どんなに殴られていても、そのことを私に知られ、同情される方が彼女には屈辱だったのだろう。被害者になることは彼女にとって弱者になることだから、それは負けることだから。

ここまでの文章は、北原みのりの文章の抜書きである。お隣に住む女の選民意識、勝ち組意識の呪縛に驚かされる。そこここにいる女のなかにある、意識のひとつ。こんな女たちに、一体どう呼びかければよいのだろうか。

四年前の東日本大震災のときに数日間泣き続け、翌年の第二次安倍政権が誕生してから殆どテレビを観なくなった北原みのり。その彼女がいわゆる「行動する保守」の女たちを取材する。

変わりばえしないサヨク・スローガンの「つまらなさ」、ひとに訴える気持ちのないデモンストレーションに、わたしもうんざりする。叫べば叫ぶほど、通行人との距離が出てくる。いっぽう愛国派の「花時計」やら「そよ風」グループの言葉の「わかりやすさ」は、どうだ。とくに手作り感あふれる街頭行動に、北原はフェミニズム・アクションを始めた頃の自分と重ねて回想する。

在日三世であり日本に帰化した朴順梨。幼い頃から少数派を生きてきた。だからマイノリテイの立場から悩み考える。日本が好きだと思いながらも、日本人たちから受けた心無い言い方や態度に、辛い気まずい思いを抱えてきたのだった。そして現在、ヘイト・デモの参加者には、女性が結構いる。彼女たちは「韓国人を叩き出せ!」って叫んだ後に家に帰って、子供の食事とか作ってるんだろうか、その二面性はどうなんだろう。困難を極めた対面取材、執筆は朴順梨の人生の棚卸しでもある。そう、著者の二人は、読んでいるこちらが苦しくなるほど悩み、時に心が折れそうになりながらも対話を続けた。苦悩に満ちた取材をし、よく書いてくれた、ありがとう。

◇北原みのり・朴順梨 『奥さまは愛国 〈普通の主婦〉が愛国運動にはまっている』 河出書房新社

雨宮処凛がゆく! 『奥さまは愛国』を読んで。の巻

クリエイティブ・コモンズにて、転載。救援連絡センター発行「救援」紙の、2面の連載コラムより
 

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