「わたしのいないテーブルで」 丸山正樹 東京創元社
ろう者との通訳士シリーズ、4冊め。何森スピンオフも含めて、最高の出来。うれしい。
でもでも、コロナ禍の二〇二〇年の春からなので辛いねえ。今回は元が新聞連載小説なので時系列で進む。ううう。弱者は、そして女は、厳しい状況に追い込まれていく。
(とはいえ通訳士の一家は、ひとつひとつ具体的に難関を乗り越えようとする。そこが光明なの。)
ところで職を失い実家に戻るしかなくなった、ろう者の彼女。母親を包丁で刺してしまう。
黙秘する、弁護士にも。閉じたこころ。
ディナーテーブル症候群って、なんだ? 知ってみたら症候群というより、疎外されて当然に起こる反応じゃないか。病気みたいに名付けるなよ。いわゆる健常者思考が、どれだけ傲慢なんだと憤慨した。ともあれ、それを見つけてくれた人びとに拍手。家族の裏側が見えてしまったわんわん、ありがとう。
感謝で言えば、ろう者の高校生の蹶起にも。