気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

ラディゲの齢 高橋ひろ子

2008-03-29 00:45:39 | つれづれ
破らずに四月のままにしておけばカレンダーのめぐり花散り止まぬ

大声を出さぬ家族と言はれつつ昼餉に啜るひやむぎの音

待つといふかたちあらはに垂れてゐる冬のぶらんこ鉄の匂ひして

わがかつて過ぎたるやうにわれの子が過ぎけるレイモン・ラディゲの齢

影を買ふ男が来るといふ月夜庭の芝生のぬれぬれとして

子が眠り夫が眠りキッチンのバケツに馬鈴薯の芽の伸びる音

(高橋ひろ子 ラディゲの齢 砂子屋書房)

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高橋ひろ子さんは、某超結社の歌会でのお友達。
以前出された第二歌集をいただいた。

高校生のときに読まれたラディゲの『肉体の悪魔』に衝撃を受けた文学少女だったことが想像される。
ラディゲは17歳ころに、『肉体の悪魔』を書き、20歳で亡くなっている。高橋さんは結婚し、主婦として三人のお子さんを育てられた。
この歌集には、家族を中心として生きて来られた軌跡が詠われている。二首目に「大声を出さぬ家族・・・」と書かれているようにひっそり穏やかに暮らしておられるのだろう。しかし、カレンダーの歌や、影を買う男の歌から、高橋さんがやはり心の中に詩をもって生きておられて、単なる主婦だけで済まない魂を持っておられることがわかる。

思ひではときをりわれを泣かしむるいつか娘と歩きし小道
(近藤かすみ)


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