気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

今日の朝日歌壇

2011-06-20 18:43:27 | 朝日歌壇
木漏れ日の光一粒触れるたび一つ増えゆく鹿の白斑(はくはん)
(桜井市 田村美由紀)

玉葱が日に日に太る五月晴れ土佐の鰹の藁焼きを買う
(福山市 武暁)

停車するたびに深まる蛙の夜これより先はすべて各駅
(坂戸市 山崎波浪)

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一首目。綺麗に出来あがっているが、実は突っ込み所満載の歌。歌人で、「木漏れ日」という言葉を嫌う人が多い。あれは正確に言えば、「葉漏れ日」であって「木漏れ日」は正確でないと言われる。
鹿の白斑は幼い時期に出るものだろう。光が当たって白斑が出るなんて、現実にありそうもない。しかし、まるでディズニーの映画を見ているように、この世界を宜ってしまう。だまされたっていいと思ってしまう力のある歌だと思う。
二首目。水にさらした玉葱を鰹のたたきにたっぷりかけて食べるのは、最高のごちそう。食べ物の歌は、まず美味しそうなのが良い。
三首目。電車がどんどん人里を離れたところに入っていく様子が、よくわかる。結句の「各駅」は各駅停車の略だろう。初句に戻って読めば、辻褄が合う。