気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

空と自動車

2005-08-09 22:47:10 | つれづれ
一人づつ疎み去りたれば一人にて行きも帰りも地下鉄に眠る

ぐらぐらと揺れて頭蓋がはづれたりわれの内側ばかり見てゐて

真面目過ぎる「過ぎる」部分が駄目ならむ真面目自体(そのもの)はそれで佳(よ)しとして

はつきりとこつちがいいと言ひくれし女店員が決めしボールペン持つ

次々と自動車止めてわが犬が赤信号の道渡り行く

(奥村晃作歌集 空と自動車 新現代歌人叢書 短歌新聞社)

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奥村晃作先生のHP「奥村晃作短歌ワールド」で、奥村作品にはたくさん触れているつもりだったが、この「空と自動車」が出て、奥村短歌の全体を改めて読んでいる。後記で「この一冊があれば「必要にして十分」と言い得る歌集を編む機会を・・・」とあるように奥村短歌のいまの全貌がわかる歌集である。まっすぐに気持ちが届いて、そのあとふっと笑いや悲しみが伝わる歌。