気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

今日の朝日歌壇

2005-08-22 23:16:54 | 朝日歌壇
赤んぼの泣き声どこかすずしくて記憶の昼の風鈴が鳴る
(相模原市 岩元秀人)

誰(た)も行かぬ陸橋三本架かる道路(みち)炎暑にとろりと溶ければ良いに
(堺市 平井明美)

江戸の粋語り終わりてまた江戸へ戻りゆきしか杉浦日向子
(塩瀬市 百瀬享)

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一首目。暑くるしいはずの赤ん坊の泣き声を、作者は涼しいと感じている。それは子育てについて、もう他人事になってしまったからだろう。下句、記憶の昼の風鈴が良い。

二首目。炎暑の熱気が立つ様子が伝わる。「溶ければ良いに」という結句に人の意地悪さが表れている。そこがいいと思う。短歌には悪意が出てしまっても、31文字の詩形の中でむしろ際立つ。

三首目。先日亡くなられた杉浦日向子氏への挽歌。享年46歳。彼女の好んだ江戸に戻ったと思えば、何か救われる気がする。